ブックタイトル週刊粧業2019年4月8日号

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概要

週刊粧業2019年4月8日号

第3155号 (第3種郵便物認可) 週  刊  粧  業 2019年(平成31年)4月8日(2) 原谷氏はまずはじめに、聴講者に医薬業界の関係者が多いことを踏まえ、化粧品市場の概略について「世界の化粧品市場は小売ベースで約46兆円となっており、日本はそのうちの8・2%を占め、世界第3位につけている。企業別売上ランキングでコーセーは、日本で3位、世界で11位につけている。世界的なJ―Beauty人気の高まりで、2016年には化粧品の輸出額が輸入額を超え、2018年は5000億円を突破する見込みだ。一方、国内の動向に目を転じると、経済産業省が発表する化粧品出荷実績(国内)は1997年~2016年の20年にわたり1兆5000億円とほぼ横ばいだが、個数は右肩上がりで増え続け、低価格と高価格に二極化している。化粧品市場は成熟市場といわれているが、異業種による新規参入、美容分野や医療分野との境界領域への進出などにより、成長の余地は十分にある」と説明した。 続いて、原谷氏はコーセーの概要について「商品開発力や研究開発力を背景に高付加価値化粧品に強みを持ち、業界初の商品やロングセラー商品が多い。また、化粧品専業ながら、様々なターゲット層や流通に対応した多彩なブランドを擁し、独自のブランドマーケティングを展開している」と語った。 講演のテーマである「化粧品における付加価値」については、消費者に「メーカーによる製品の違いが少なくなったと思う商品分野」について尋ねたある調査で「家電製品」が35%となる中、「化粧品」が11%にとどまっていたという事例を引用しつつ、「化粧品という消費財はブランド力が相対的にモノをいう分野であり、ブランドづくりを進めることができれば『これでなくては困る』という要素をつくり出すことができ、コモディティ化にも対抗できる」と述べた。 支持されるブランドの要件について原谷氏は、「独自の世界観を持っていること」「人との関係性が組み込まれていること」「ロジカルに正しい姿勢が保たれていること」の3つを挙げ、コーセーの活動理念である「良い商品を 良いお店できちんと売る」はその3要件を満たしていることを説明した。 「『良い商品』は独自 ポーラ化成工業は、日本で初めてシワ改善効果が認められた医薬部外品「リンクルショット メディカル セラム」の開発に成功するなど、革新的な研究とエビデンスに基づく製品開発を強みとしている。 近年は、グループの強みである「感性溢れる独自価値の提供」を強化すべく、最先端・異分野の外部機関とのオープンイノベーションを推進。皮膚科学研究の深耕・有効素材の開発においても、外部機関との連携により革新的アウトプットやスピードアップを図っている。 一方、ペプチドリームは、多種多様な特殊ペプチドを自在に作り出し、医薬品等の候補化合物を短期間で探索する独自の創薬開発プラットフォームシステム「PDPS」(Peptide Discovery Platform System)と、同システムを用いた創薬研究を強みとしている。特殊ペプチドの技術は医薬品以外の分野でも活用が期待できるため、PDPSの適用範囲を拡大していくことで、ビジネスモデルの戦略的拡大を目指している。 今後は、フロンティアリサーチセンターが保有する皮膚科学の知見と医薬部外品・化粧品の素材開発力をもとに、ペプチドリームのPDPSを活用することでパイプライン選択の拡充を図り、確かな有効性と安全性、安定性に優れた素材を迅速に創出していく。 ペプチドリームは、PDPSの活用をポーラ化成工業における医薬部外品や化粧品の素材開発に拡大するとともに、ポーラ化成工業との協業により、例えば、皮膚に効果のある医薬品シーズの創出などに取り組んでいく。の世界観を持っている、『良いお店』は人との関係性が組み込まれている、『きちんと売る』はロジカルに正しい姿勢が保たれているというブランドに求められる要件にそれぞれ合致している」(原谷氏) 元々研究畑出身である原谷氏は、安心・安全が大前提であるとの認識を示しつつ、「サイエンス(Intelligence)」(効能効果・機能性〈左脳的要素〉)と「アート(Sensuousness)」(感性・官能・嗜好性〈右脳的要素〉)の融合を図ることが化粧品を生み出すうえで必要不可欠な要素だと語った。 ただ、「サイエンス」と「アート」の融合、「安心・安全」というこれまでのモノづくりのあり方は堅持しつつも、今後については「グローバルな適応性(Adaptability)」「持続可能性(Sustainability)」が重要な要素になるという。 最後に原谷氏は、今後の方向性を示すキーワードとして「医療(Cure)と化粧品(Care)の連携によるQOL維持向上」「新たな価値創出」を提示した。 「幼い頃から適切なスキンケアを続けることで皮膚バリア機能低下によるアレルギー症状は未然に防ぐことができるだろうし、医薬品によるアトピー治療と、その寛解期における化粧品によるスキンケアの連携により、アトピー性皮膚炎患者のQOL向上への貢献も期待できるだろう。新たな価値創出に向けては、境界領域における異業種企業(美容分野=ミルボン、医療分野=マルホ)との連携に加え、『よりパーソナルな顧客体験の追求』『デジタルの活用』『オープンイノベーションの推進』『新たな顧客接点づくり』が重要になるだろう」(原谷氏) ポーラ化成工業は、ペプチドリーム(本社=神奈川県川崎市、リード・パトリック社長)と協働し、ペプチドを用いた医薬品や医薬部外品、化粧品の研究開発を進める。ポーラ化成工業の保有する皮膚科学を中心とした基礎研究の知見と、ペプチドリームの保有する新たな機能をもつペプチドを作り出す技術を融合し、革新的な研究開発を進めていく。ペプチドリーム 本社・研究所 コーセー 執行役員 経営企画部長 兼 広報室長の原谷美典氏は3月19日、国際医薬品開発展のジャパンライフサイエンスウィークセミナーにて、「化粧品における付加価値とは?~医薬品と化粧品との違い~」をテーマに講演を行った。原谷美典氏ポーラ化成ペプチドリームと協業で研究開発を加速皮膚科学とペプチド科学の融合で革新的製品を創出「化粧品における付加価値」について講演コーセー執行役員 原谷美典氏