COSMETICS tanakaya、「平等性」を軸にした店舗運営で業績伸ばす

カンタンに言うと

COSMETICS tanakaya、「平等性」を軸にした店舗運営で業績伸ばす

  「COSMETICS tanakaya (タナカヤ)」 は1948年、 祖父が当時都電 (現・都営三田線) の最終駅だった志村坂上駅で創業した。 その後、 都電の延長にともない建設された 「高島平駅」 前の高島平団地にも店舗を構え、 「tanakaya高島平店」 は約40年間、 団地に暮らす人々とともに歳月を重ねてきた。 スーパーや青果店に挟まれ人通りが多い好立地にあるが、 より幅広い層から支持を獲得するため積極的なアピール戦略を展開している。

 一般的には 「個別対応」 や 「専門性」 を掲げる化粧品店が多い中、 敢えて数年前から 「平等性」 を基本にした店舗運営に方針転換した。 その結果、 昨年の売上げは世間が不況のあおりを受ける中、 客数を大幅に伸ばし前年比7%増と好調に推移した。 そこで店の経営方針について田中大輔社長に話を聞いた。

誰にでも平等に応対し
より多くの顧客との接点を

  「ここでは100円の化粧品しか買わなくても大切にしてもらえるのだと思っていただけたら」。こう話す田中社長は店舗の運営方針に 「誰にでも平等な対応」 を掲げている。

 都営三田線 「高島平駅」 改札を抜けるとすぐ目の前にある高島平団地の1階に位置し、 団地建設当初から約40年もの間、 地域や周辺団地の人たちの 「行きつけ」 として存在する同店には、 祖母の代から母、 娘へと3世代にわたって通い続ける客もいるという。 それは単に住民に親しみがあるからという理由だけでなく、 消費者の志向に合わせた方針転換を随時実行しているからでもある。 その一つが 「平等性」 だ。

 数年前まで実施していた 「何万円以上買ったら記念品をプレゼント」 というような、 高い買い物をした客を優遇するサービスを一切やめた。 その代わり、 化粧水を購入した人には誰でもポイントカードに押すスタンプ数を10個多く押している。

 「自発的に綺麗になろうとしている人には徹底的に協力したい。 綺麗になりたい人は化粧水が欠かせないアイテムなので、 化粧水を購入する人には必ずサービスする」 (同氏) と言うように化粧水にこだわった対応をしている。

 この他にも、 化粧品の空きビンを持ってきたらそれがどの店で購入したものであっても、 リサイクルに協力してくれたお礼として金券50円分を渡している。 カウンセリングを受けた人には無料でサンプルを渡し、 自分に合った化粧品を見つけられるようにもしている。

 平等を追求すると、 来店した人に接する時間も自ずと変化する。 高額な商品を購入する人に、 カウンセラーはより丁寧に時間をかけて応対したがるが、 それでは平等にならないからだ。 今まで1時間カウンセリングに時間をかけていたとしたらその半分の時間で切り上げ、 他の人に対して少しでも時間をかけるよう心掛けている。

 同時にカウンセリングコーナーの面積も縮小し、 カウンセラーをコーナーの外に立たせて接客する時間を増やした。 そうすることで多くの人に目を向けられ、 化粧品を持ったままレジ待ちしている人を減らせるだけでなく、 効率的に相談に乗れるのだという。

 こうした 「平等性」 は約3000人いるタナカヤの友の会会員に、 店として何ができるのかを考えた結果でもある。 実際に、 「3000人の会員さん全員に本当に個別に対応しきれるのだろうか」 と田中社長は疑問を感じたという。 そこでその人たちを同等に接することができるように 「平等性」 を重視した。

 方針転換したことについて 「良くなったねと言う人もいれば前の方が良かったと言う人もいる。 反応は様々。 でも変えるのは必要なことだった」 (田中社長) としている。

 今後の方針として 「化粧水」 に特化したサービスは続けていく。販売が軌道に乗り、 化粧水を購入していた人にカウンセリングで新たに乳液やクリームを販売したところ、 お客が離れていき化粧水すら買ってくれなくなった。 化粧水に重点を置く理由はこうした経験のたまものでもあるのだ。

コミュニティサイトを活用し
地域活性化と店の認知度アップ図る

 現在は認知度を高め、 経営基盤を固めるために板橋区の地域コミュニティサイト 「Loveita (ラビータ)」 に店舗情報を掲載し、 新たな顧客獲得を推進する。

 この 「ラビータ」 は、 個人でデザイン業を営んでいる板橋区在住の女性会員が、 地域の活性化を目的に今年5月にオープンさせたばかりのローカル情報サイトである。 板橋区のコミュニティビジネス・コンテストで入賞した実績を持ち、 口コミで広まりつつある。

 田中社長は 「地元にこういうものがあるんだよという紹介サイトを通じて、 街に人を集めたい。 それは結果的に自治体の活性化にも繋がるから。 今はサイトが有名になるお手伝いをしている」 と話すように、 サイトを見て来店した人には化粧品のサンプルを配布するなどのサービスを実施する予定だ。 地域の活性化に貢献しつつ、 来店する人を増やしていくのが狙いである。

 ただ、 サイトを見て来店した人は流行に敏感な人が多く、 固定客につなげられる見込みは薄い。 それでもこうした活動を実施するのは 「見て店を知ってくれるまででいい。 数年、 数十年経って、 育児や子育てが終わった時に 『そういえばこんな店あそこにあったな』 と思い出してもらうことが大事」 (田中社長) との強い信念があるからだ。

商品を買わせないことで固定客をつかむ

  「店に行ったら何か買わされる」 という専門店のイメージを払拭することにも注力している。 来店する人は、 世間話をするだけで帰ることや、 相談だけで帰ることが多々ある。 売りつけないことで店の敷居を低くし、 店の信頼につなげている。

 また普段は500円で施術しているワンコインエステを無料で行ったり、 メークのミニレッスン会を開催するなど、 年内はそうした活動を繰り返し行うことで信頼を得て、 将来の顧客育成に弾みをつけたい考えだ。

 顧客の年齢層は店舗が団地内あることも影響し、 20代後半からの層に厚く、 それより下の年代は少ないのが現状である。 年齢層を広げる策として、 田中社長は積極的なエリアマーケティングを提案する。

  「10代の子らが初めて化粧品を買う時に行く店は百貨店内の雑貨屋がほとんど。 まともにカウンセリングを受けないまま自分に合うか分からない化粧品を使い続けているのはかわいそう。 そういった人たちが何を望んでいるのかが分かれば、 それに合った化粧品を提供できる。 ミニレッスンでもいいので、 一度店に来て平等であることのメリットを知っていただけたらと強く感じる。 そのため現在は、 『同じ商品を買うならここで』 と思ってもらえる店づくりに腐心している」 (田中社長)。

 〈店舗概要〉
 住所=東京都板橋区高島平2-33-1-110▽電話=03-3936-4547▽FAX=03-3932-7434▽営業時間=午前10時30分~午後7時30分

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