飛躍的に保湿力高めた「モイストフラーレン(MF)」と
メークアップに適した「ヴェールフラーレン(VF)」を提案
ビタミンC60バイオリサーチは、化粧品原料を始めとするライフサイエンス分野にフラーレンを応用化するため、三菱商事の子会社として2003年に創業した。1998年に親会社がフラーレンの物質特許を取得し、原料の実用化に向けVC60社で基礎データや安全性に関する研究を行い、2005年に商品化第一号原料となる水溶性フラーレン「ラジカルスポンジ(RS)」の発売に至った。
そして、それから10年が経過した今年、飛躍的に保湿力高めた「モイストフラーレン(MF)」とメークアップに適した「ヴェールフラーレン(VF)」が誕生し、先日開催された「CITE Japan 2015」で初披露された。フラーレン発売から今後の展望について林源太郎社長に話を伺った。
ノーベル賞受賞原料のフラーレン
世界で唯一化粧品原料として販売
フラーレンが最初に発見されたのは1985年のことだ。イギリスの化学者であるハロルド・クロトー博士ら3人に発見され、1992年にフラーレンが抗酸化力を有することが判り、以降、生体内抗酸化作用の研究が活発化した。そして、発見者3名の博士は、発見の功績が認められ、1996年にノーベル化学賞を受賞することとなった。
フラーレンは、60個以上の炭素原子がサッカーボールのように結合した球状の分子で、ビタミンCの172倍の抗酸化機能や12時間を超える持続性が確認され、美容の分野で世界的に注目されている。
今でこそ高い抗酸化作用とその安全性は認知され始めているが、発売した2005年当時は、未知の化粧品原料の安全性を心配する声が多く、販売には苦労も伴ったという。
これに対し同社は安全性に対する懸念を払しょくするため数多くの試験を実施し、情報発信を行った。例えば毒性試験については経口、皮膚、眼、光毒性など医薬部外品(添加剤)の申請に必要な9項目の試験やヒトパッチテスト試験などを実施し、すべてにおいて安全性が確認された。また、ケタ外れの抗酸化作用から発展させ、メラニン産生抑制機能や細胞死の抑制など様々なエビデンスの取得に注力し、その研究成果を学会で発表するなど、研究開発力とともにプレゼン力も高めてきた。
2009年には油溶性の「リポフラーレン」が発売された。この研究開発には独立行政法人である「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」から補助金が出るなど、国からの期待もそれだけ大きいことが推し量れる。
「未知の化粧品原料」でありながら、発売直後からクリニックのオリジナル品やドクターズコスメなどでの採用が相次いだのも、こうした効果効能に関する豊富なエビデンスの取得や安全に対する積極的な取り組みが奏功したためだ。現在では1500件以上のクリニックで採用実績があるという。発売から10年が経過したが、その間フラーレンが原因とみられる肌トラブルの報告はないといい、こうしたことも信頼につながっている1つの背景だ。
製品認知拡大図るためPR強化
原料では異例のタイアップ企画も
同社では、原料会社としては異例の消費者向けのプロモーションにも積極的だ。まず、2005年の「ラジカルスポンジ」発売直後には、雑誌とのタイアップを行い、「フラーレン」という新しい美容原料を消費者に披露した。
また、Webの美容コラムサイトなども活用した。2011年には「フラーレンコスメ百貨」をWeb上にオープンし、そこで商品化されているフラーレン化粧品を紹介している。
大きな転機となったのは、化粧品クチコミサイトの「@cosme」とのタイアップ企画だ。2012年には、原料メーカーとしては初めてのタイアップ企画として「フラーレンコスメ特集」を展開し、フラーレン配合化粧品メーカーとともにプレゼント企画も実施した。同特集は月間PV数が最高で3万7906PVにも達し、「@cosme」側も驚くほどの反響があったという。翌年の2013年も数回にわたって「フラーレンコスメ特集」でアンケートや識者インタビューなどを掲載し、2014年にはリアル店舗の「@cosmeストア」にフラーレンコスメコーナーを限定展開するなど情報発信に心血を注いだ。
「フラーレン自体の認知度を上げなければ、お取引先様が困る。広く消費者に存在を知らせ、化粧品を使っていただくのは、世界で唯一化粧品原料としてのフラーレンを製造販売している企業の使命でもある。その一心で数々のタイアップ企画を展開し、情報発信に努めてきた。最近ようやくその活動の成果が実り、フラーレンの名前も知られるようになった。お取引先も自社のホームページで積極的に紹介していただけるようにもなった。定期的な消費者認知度調査もしているが2年前は9%であったのが今年は20%まで上昇した。また、営業時には口頭でも説明しやすく、お客様が後からでもわかりやすい資料作成もこだわった」(林社長)
新たに2つの製品を開発
展示会で発表し反応も上々
プロモーションによる認知拡大を強化する傍ら、フラーレンの新たな機能を探る研究も続けた。抗酸化から始まり、角層バリア、エイジングケア、保湿、ブライトニング、毛穴ケア、ヘアケアなど「研究すればするほど様々な機能が確認できた」と、同社の研究者に言わしめるほど、数多くのエビデンスを取得している。
そうして、「ラジカルスポンジ」が発売されて10年が経過した節目となる今年、新たなフラーレン原料が発売された。それが、「モイストフラーレン(MF)」「ヴェールフラーレン(VF)」の2種だ。先日開催された「CITE Japan 2015」において発表となった。
「モイストフラーレン」は、フラーレンの特長の1つである保湿機能を高めた製品だ。角層のバリア機能を回復させ、肌本来が持っている保湿機能を引き出すだけでなく、天然保湿因子NMFの発現を増幅させ、保湿機能を大幅に高めることが確認されている。既存原料である「ラジカルスポンジ」よりも保湿性が高く、その数値については角層水分量の比較試験などでも実証されている。またリポソーム化することにより浸透性が向上、さらに他の原料と組み合わせてオリジナルのフラーレンカプセル原料をつくりカスタマイズ化することができるという。
もう一方の新原料である「ヴェールフラーレン」はフラーレンを多孔質のシリカに含浸させたパウダー状原料だ。フラーレンの粉体化とメークアップ商品への処方提案を望む声が年々高まってきていたこともあり、発売直後から周囲の期待値も高いという。フラーレンの抗酸化能を活かした、皮脂の分泌や毛穴開きを抑えるなど、スキンケアもできる機能性メークアップアイテムに提案していく方針だ。シリカの粒径は4μmと一般的なシリカと同じ大きさで感触も良好なため、メークアップ全般の製品に使いやすいとしている。
同社は今後、これら2つの新商品の提案を強化するとともに、現在医薬品や医薬部外品にも対応した商品の開発に向け研究を続けており、「ライフサイエンス」の全般に関わる原料として、フラーレンの地位確立を目指す。また、海外での販売については、現在、韓国・台湾・中国・タイ・シンガポール・マレーシア・米国・カナダ等で販売しているが、今後さらに販路開拓を強化し、将来的には同社の売上構成比の5割まで拡大させたいという。
「フラーレンが将来さらに広く市場に浸透するために、様々な布石を打ってるところだ。今後も新しいコンセプトを打ち出し、絶えず新しい商品開発をしていきたい。研究開発投資を続け多くの可能性を秘めているこの原料の可能性をさらに引き出し、様々な分野で提案していきたい」(林社長)
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この記事は週刊粧業 2015年6月29日号 5ページ 掲載
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