日本コルマー・神崎会長、段階的に売上高を500億円に引き上げ、グローバル№1OEMへ

粧業日報 2015年11月11日号 1ページ

カンタンに言うと

日本コルマー・神崎会長、段階的に売上高を500億円に引き上げ、グローバル№1OEMへ
 ――改めて、OEM業界に吹いている「追い風」について説明していただけますか。

 神崎 一つは、ブランドメーカーが主要製品以外の製品に関して、外部委託するアウトソーシングへの抵抗感が薄れてきたことだ。先述の市場状況を踏まえれば、今後もさらに進むと考えられる。

 市場縮小にともない、自社での生産量が減りはじめれば、工場を維持するための固定費が高まり、収益を圧迫してくる。

 ブランドメーカーの事業目的は化粧品を販売して業績をあげることであり、自社生産はそのための一手段に過ぎない。安定的に収益を確保するには、販売により注力し、生産効率を高めるために工場を再編しなければならない。

 しかしながら、工場そのものが老朽化していれば、部分改修、あるいは全面改修が必要になるが、長期的な生産量の減少が見えている中で、積極的に改修へ投資することは難しい。そうすると、自社生産から「手段を変える(アウトソーシング)」ことが有力な選択肢となる。

 一例として、当社が2015年1月に稼働を開始した静岡工場では、ブランドメーカーの工場再編にともなう一部製品の受け入れや、設備を移管して製造を開始した製品もある。従来品と同等かそれ以上の品質を求められるが、問題なく進められている。むしろ「以前よりも品質が良くなった」と言われたほどだ。

 このように、OEM各社は着実に設備投資を行い、生産力の増強を図って品質レベルの向上に努めてきた。ブランドメーカーは、そうしたOEM企業へアウトソースすることで、生産リスクを軽減し、主目的である販売により力を注げることを実感し始めている。

 このアウトソーシング化は、製造面だけでなく、研究開発においても同様のことが言える。厳しい言い方かもしれないが、低迷化にある市場でしっかりと差別化が図れるユニークな製品を求められる時代に、十数名の研究開発規模でそれを実現し続けていくのは難しいといえる。

 事実、近年は当社の生産力だけではなく、研究員約120名体制の「開発力」を期待して依頼されるケースが増えている。新製品の案件はコンペも多いが、価格を重視しつつも、「すぐれた製品であれば、売値を変えてでも扱いたい」というマインドの顧客が増えてきている。長年付き合いのある取引先の中には、製品の企画開発会議から当社の研究員に加わってもらいたいといった依頼もある。

 もう一つの追い風は、新規事業として化粧品ビジネスを選択する異業種企業の増加だ。化粧品ビジネスは企業としてのイメージも良く、過去に参入してきた企業の多くが通販を軸に展開してきたように、大がかりな初期投資をせずにスタートできる点も魅力であり、今後も増えてくるだろう。

 そうした参入企業のほとんどが、化粧品工場を持たないファブレス企業であり、私たちOEMの生産力と開発力を大いに期待している。



 ――期待の表れとして、ブランドメーカーの要求・要望も高まってきそうです。

 神崎 そうした要望にさらに応えるべく、当社も2015年4月、東京工業大学ベンチャープラザ内に横浜研究所を新設し、産学連携による研究をスタートした。素材研究から、今までにない新機軸の化粧品・医薬部外品の開発に取り組んでいる。成果に結びつくまでに多少の時間を要するが、ユニークな製品を生み出すことを期待している。

 また、ベンチャープラザ内には、様々なベンチャー企業が集まっている。業界は違えど、「新たな価値創造」という志を同じくして研究開発に取り組む企業と交流できる環境にあることも、成長の糧になると確信している。

 静岡工場と横浜研究所を設立した理由は、研究開発・生産の分散化による「災害などのリスクヘッジ」「労働力の安定確保」「関東を拠点にする顧客へのサービス強化」の3つに大別できる。

 OEM業界内で金額、生産シェアが大きくなるにつれ、業界での供給責任も高まっていることをさらに意識し、今後も投資していく必要がある。静岡工場の敷地内にはまだ余裕があるので、増設も視野に入れながら取り組んでいくつもりだ。

 また、研究所についても、これまでは西日本に拠点が集中していたため、研究員の出身大学・大学院が関西系に偏っていた。横浜研究所を東日本エリアでの新たな開発人材の受け皿とし、関東出身の優秀な研究者を受け入れていきたい。

 ここ10年間で国内化粧品市場は、前年を割り込んだ年も何度かあったが、日本コルマー単体でも11期連続増収を達成できた主因は、以上のような業界トップということを意識した取り組みにあるだろう。16年3月期も単体で前年比3%台後半の増加を見込んでいる。

海外第2の生産拠点は現時点で
ベトナムが最有力候補に

 ――近年、国内のそうした状況から、海外事業に力を注ぐブランドメーカーも増えてきました。OEM業界にとっても海外進出・進展は成長戦略の一つになるかと思います。御社は既に中国・蘇州コルマーを運営していますが、中国と同様に成長マーケットとして期待されるASEAN諸国への進出を公言してきました。その後の進捗状況はいかがですか。

 神崎 進出時期はまだ明らかにできないが、東南アジアに海外第2の生産拠点を構えることを本格的に検討している。工場の広さは延床面積2000~3000坪、敷地面積は増設も見込み、5000坪程度を予定している。

 ブランドメーカーの立場に立てば、海外の成長マーケットへビジネスを広げようと考えるのが当然である。しかしながら、生産拠点を持つにはリスクが大きすぎる。海外事業では、OEMを利用しようという需要はかなり大きいと見ている。

 そうしたブランドメーカーの海外戦略においても、国内同様、パートナーシップを築けるよう、当社では10年ほど前からASEAN諸国のマーケティングを本格的に進めてきた。

 現時点においてはベトナムが有力候補であるが、同国は、共産党の一党独裁政権下にあるという点では、中国と似ており、強権的であるがゆえに、統制がとれている。ベトナム南部では近年、様々な業種の中小企業も進出しはじめ、インフラもだいぶ整ってきている。

 さらに、親日的な国民性であることは、欧米系のグローバル企業が日系OEMに関心を持つ材料にもなると見ている。

 ――過去の取材で、神崎会長は来期、2017年3月期連結決算で売上高300億円の達成を目指すと話されました。達成後に描いている青写真についてお聞かせください。

 神崎 矢野経済研究所の調査報告によると国内化粧品OEM市場は2200~2300億円で、現在の当社シェアは10%程度だ。業界トップとしては低い水準であり、15%まで引き上げたいと考えている。連結売上高300億円という目標は、そのための一里塚としての位置づけであり、今期の業績にもよるが、来期で達成できる見込みだ。

 当社の最終目標がグローバル№1の化粧品OEMであることに変わりはない。それに向け、段階的に売上高500億円を目指すことになるが、その規模になれば、さすがに従来の取り組みだけではかなり時間がかかってしまう。

 顧客へのサービス領域拡大を目的に、健康食品、医薬品など化粧品と近しい業界のOEM企業のM&Aも視野に、中長期的での達成を目指していく。

 M&Aは相手があっての話だが、近年、中小企業の中には後継者問題に頭を悩ませている企業は少なくない。

 事業を安心して引き継げる次世代の経営者が育っていない場合、事業存続とともに、現在抱えている従業員とその家族の生活を保障してくれるようなM&Aを求めている。お互いに条件が合うM&Aにより、事業拡大、そして成長加速につなげていきたい。


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