花王・北里大、新型コロナ中和能を有するVHH抗体の取得に成功

粧業日報 2020年5月20日号 4ページ

花王・北里大、新型コロナ中和能を有するVHH抗体の取得に成功
 花王は、北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学I研究室 片山和彦教授、Epsilon Molecular Engineering(EME)の研究グループとともに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功した。

 この研究成果は、新型コロナウイルス感染症の治療薬や診断薬の開発につながることが期待される。

 現在、世界各地で新型コロナウイルス感染症が大きな課題となっており、一刻も早い治療薬の開発が望まれている。また、感染拡大を抑えるために感染の有無を調べる検査についても、迅速かつ簡便、確実な検査法の開発が望まれている。

 これら課題を解決する手段の1つとして、新型コロナウイルスと特異的に結合する抗体が待ち望まれている。

 抗体は体内に侵入した異物に対する免疫に関わり、特定の抗原と結合する能力を有しており、この能力を利用することで、様々なウイルスの感染抑制や特異的検出が可能となり、治療薬や検査薬に利用されている。

 そこで花王は、北里大学とEMEと協力し、新型コロナウイルスに結合するVHH抗体の作製に取り組んだ。

 花王は、EMEが有するハイスループットVHH抗体スクリーニングを可能とするcDNAディスプレイ技術の提供を受け、ヒト培養細胞で発現させた新型コロナウイルスのS1タンパク質を標的分子に用いたスクリーニングを実施し、候補となるVHH抗体の配列情報を取得した。

 また、長年の研究開発で培ったバイオ生産技術を活用することで、候補VHH抗体の配列情報から得られた候補遺伝子の人工合成を行い、微生物によるVHH抗体生産を行った。作製したVHH抗体の標的分子に対する結合能を評価したところ、VHH抗体が標的分子と結合することが確認できた。

 北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学I研究室では、いち早く開発したSARS-CoV-2に対する薬剤の不活化効果を評価する技術を用い、花王が提供した候補VHH抗体の新型コロナウイルス粒子への結合と、中和活性の有無を確認することで感染抑制能を評価した。

 その結果、同VHH抗体を添加した場合に新型コロナウイルスの細胞への感染が抑制されていることが確認できた。このことから、取得したVHH抗体は新型コロナウイルスに結合するだけでなく、感染抑制能を有することが明らかとなった。

 今回の研究では、新型コロナウイルスに対して結合することで感染能の抑制が期待できるVHH抗体の取得に成功したことから、新型コロナウイルスの治療薬や検査薬の開発につながることが期待される。
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