資生堂、IL-8が表皮幹細胞にダメージを与えることを発見

粧業日報 2020年12月7日号 1ページ

カンタンに言うと

  •  皮膚のリンパ管機能に着目した新たなスキンケアアプローチへ
資生堂、IL-8が表皮幹細胞にダメージを与えることを発見
 資生堂は、皮膚のリンパ管が回収する老廃物の一種であり、加齢によって増える「炎症性因子(IL-8)」が、表皮幹細胞にダメージをもたらし、さらに皮膚のバリア機能にまで影響を与え、細胞の老化を促進することを発見した。

 皮膚のリンパ管は、「皮膚の老廃物を回収するという特徴があり、リンパの流れの開始点として表皮の直下に多数存在すること」「加齢でリンパ管の密度が減少することにより、皮膚に老廃物が蓄積すること」が様々な研究でわかっていた。



 一方で、加齢に伴い、健やかな表皮細胞の源である表皮幹細胞の数が減少することもわかっていたが、その原因は解明されておらず、皮膚内の老廃物の蓄積が表皮幹細胞にダメージを与えているのかについて、実証されていなかった。

 そこで、同社は加齢によって表皮幹細胞が減少する原因を解明し、リンパ管が回収する老廃物の1つである炎症性因子が表皮幹細胞へどのような悪影響を与えるのかを検証することで、新たなスキンケアアプローチにつなげようと考えた。



 まず、表皮幹細胞の自己複製能の指標となる、コロニー形成能(細胞の若返り能力)を検証した。培地にIL-8を培養し、形成されたコロニーの数を比較した結果、対称と比較して、IL-8を添加した群において顕著にコロニー形成能が低下していることがわかった。

 次に、表皮幹細胞のマーカーとなるLrig1遺伝子の発現量を調べたところ、IL-8を加えた場合には遺伝子発現量は顕著に減少しており、表皮幹細胞の幹細胞性が失われていることが示唆された。



 続いて、IL-8の細胞老化への影響を確認する目的で老化細胞を特異的に染色する実験(βガラクトシダーゼ染色)を実施した。この結果、表皮細胞に炎症性因子を添加すると老化細胞が増加することがわかった。



 さらに、皮膚モデルに炎症性因子(IL-8)を添加し、5日間培養すると皮膚バリア機能を維持するためのブレオマイシン水解酵素(NMF産生酵素)の発現量が減少することが確認された。この結果、IL-8により、肌のバリア機能が低下することが示唆された。

 今回の研究から、皮膚の老廃物の1つである炎症性因子が皮膚内に蓄積することによって、表皮細胞は老化し、表皮のバリア機能も低下することが明らかになった。

 このことから、皮膚内に蓄積する老廃物の回収機能を高めるケアを行うことで、老廃物の蓄積を防ぎ、表皮幹細胞や表皮細胞の機能を正常に保つことができる可能性が示唆された。

 今回の研究成果をもとに、皮膚細胞の若返りに重要な役割を持つ表皮幹細胞の機能を正常に保つことで皮膚老化の改善につながる新たなアプローチによるスキンケア技術の開発に努めていく。
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