資生堂は、表皮幹細胞を維持することが表皮だけでなく真皮にまで作用し、真皮コラーゲン線維の再生に寄与することを初めて確認した。
先行研究において同社は、独自に開発した表皮幹細胞維持効果のある有用成分「ステムラン173」「海藻抽出液」が、表皮の状態を良くすることを既に明らかにしていたが、今回の研究では真皮の弾力性の向上やシワ改善効果まであることを見出した。
つまり、表皮幹細胞の維持をサポートするケアを行うことで、表皮と真皮の両方から肌状態をより良い状態へ導くことができると考えられる。
今後、肌の若返りに近づく技術として、様々なアプローチへ応用していく。研究成果の一部は、6月27日に順天堂大学で開催された第53回日本結合組織学会学術大会にて、みらい開発研究所の入山俊介研究員が日本結合組織学会大高賞を受賞した。
最外層側から表皮、真皮、皮下組織に分類される皮膚では、表皮と真皮の境界部に基底膜という厚さ約0.1マイクロメートルの非常に薄い膜が存在しており、異なる2つの組織を結合させるために重要な役割を果たしている。
同社の先行研究にて、基底膜の構成成分であるラミニン511が、肌の再生力の要である表皮幹細胞の減少を抑え、維持に重要であることを明らかにしている。
また、ラミニン511を良好な状態に保つ成分の探索を行い、ラミニン511の分解を強力に抑制する新規有用成分「ステムラン173」の開発に成功した。
また、ラミニン511の産生を促進する成分として「海藻抽出液」を見出した。
これらの成分が表皮幹細胞の維持を助けることで、肌のうるおいを高め、バリア機能を改善するなど、表皮の状態を良好にすることを2018年に既に明らかにしている。
今回は、表皮幹細胞を維持することによる肌効果の研究をさらに続けたところ、表皮幹細胞を維持すると表皮中でPDGF-BBの産生が高まり、PDGF-BBが基底膜直下の線維芽細胞に作用し、真皮中のコラーゲン産生を促進することを発見した。
そこで、表皮幹細胞維持効果があることがわかっていた「ステムラン173」を三次元培養皮膚モデルに作用させたところ、表皮への効果に加えて、真皮中でのコラーゲン産生促進効果もあることが確認できた。
さらに、「ステムラン173」を配合した製剤を一定期間連用する試験を行ったところ、1カ月の連用により頬の弾力性が有意に改善すること、2カ月の連用により目尻のシワの改善効果があることが確認できた。
また、「海藻抽出液」には、真皮コラーゲン産生を促すPDGF-BB産生促進効果があることがわかった。
以上の結果から、これらの成分が表皮幹細胞の維持により、表皮だけでなくその奥に存在する真皮の状態までも良好にすることを明らかにした。