生産力の向上と品質強化を
両立することが重要
――ものづくりの基本的な考え方について教えてください。
多治見 熊谷工場は当社で唯一の生産工場になります。全てのブランドはこの熊谷工場で生産を行っています。お客さまに安心してお使いいただける化粧品を生み出すため、安心の設備と万全な試験体制を整え、工場のスタッフ一人ひとりが責任と誇りを持って商品を生み出すことに注意を払って真摯なものづくりに取り組んでいます。
当社は創業以来、「高級化粧品の第一人者として、本物志向に徹し、美しい感動と信頼の輪を世界に広げる」という経営理念を掲げていますが、生産部門については、自らの手で作り上げ、ノウハウを生み出し蓄積していくことを意識し、自社生産に強くこだわっています。特にアルビオンブランドのスキンケア製品については、9割近くを熊谷工場で生産しています。
熊谷工場は2003年の稼働開始以来、徐々に進化してきました。スキンケアの主力製品であるスキコンや乳液についてはすでに自動化が図れています。一方、多品種少量生産のメイク製品についてはセル生産方式を採用し、手作りで生産を行っています。
安心・安全、高品質の追求に向けては、化粧品の製造に関する品質・安全性に関する国際規格であるISO22716を取得しました。原材料の購買から商品の出荷に至るまで全工程にわたる品質管理の実施と工場建物、製造設備、試験検査設備の配備を行っています。昨年8月に稼働を開始した新生産棟もこの規格に準拠しています。
――改めて新生産棟を立ち上げた狙いを教えてください。
芳賀 新生産棟(以下、第一生産棟)では、「生産力の向上」「品質の強化」「自動化の推進」をコンセプトに掲げています。今後、少子高齢化の波を受けて労働人口が減っていく中、生産力向上と品質強化を両立するためには、人への依存を減らしていくことが必要であり、特に「自動化の推進」を大きな命題として掲げ、取り組みを進めています。
一方、高級化粧品のものづくりには人にしかなし得ない五感やスキル、ノウハウといった領域があります。全てを自動化すればいいという訳ではなく、ロボットや機械が得意とする仕事と、人にしかできない仕事を明確に分けて、人は人の作業に専念できる環境を整えていくことが重要であると考えています。
もちろん、重量作業や洗浄作業、搬送作業、単純反復作業、高い再現性を必要とする作業などは、徹底して自動化を進めていきます。
一方、第二生産棟におけるメイク製品の多品種少量生産のように、人が手をかけて生産することで付加価値が生まれる作業や、機械では計り知れない五感・感性・経験値を必要とする複雑な作業については、正確性を追求し、ハンドメイドを取り入れていきます。