化粧品・医薬部外品、健康食品分野の機能性原料メーカである一丸ファルコスは、年に数品目の新規原料を開発・販売しており、現在取り扱い原料は約1000品目にのぼる。そうした新規原料の研究開発への積極的な投資は、数十年にわたり使い続けられているロングセラー原料によって支えられているともいえるだろう。
ここで紹介するヘマチン含有ヘアケア原料「グロスフィリンP(PF)」<ヘマチン液>は、その代表的な原料の1つで、発売から30年以上経った今もヘアサロン向けの化粧品・医薬部外品原料として愛用されている。
グロスフィリンPは、ヘモグロビンより製造された分子量663.5のポルフィリン誘導体「ヘマチン」を主成分とした黒褐色の液体で、パーマやヘアカラー、トリートメントといった施術用製品に配合されている。
同社は1970年後半、ポリフィリン誘導体の生理活性に着目し、研究をスタートした。ポリフェリン化合物に酵素活性や育毛効果、毛髪補修など様々な効果を見出し、1989年にヘアケア用化粧品原料として発売。現在はブタ由来の医薬部外品配合可能原料「グロスフィリンP(PF)」を販売している。
「グロスフィリンP」のポリフィリン骨格の中央にある鉄原子が、毛髪に付与した際に毛髪ケラチンタンパクのヒスチジン(His)と配位しやすく、毛髪と結合しやすい状態になる。また、ビニル基(CH-H3)とケラチンタンパクのシステイン(Cys)のSH基と結合しやすい性質を持つ(図1)。こうした特性から、「グロスフィリンP」にはパーマネント・ウェーブ保持作用のほか、過酸化水素水消去作用、メルカプタン臭の消臭作用、チロシナーゼ活性促進作用、毛髪のハリ向上作用などが確認されている。
パーマネント・ウェーブ保持作用試験では、ブリーチ処理したアジア人毛に対し、2剤式パーマネント・ウェーブ処理を行い、その後洗剤洗浄を15回繰り返しウェーブの持ち(保持作用)を検討した。
パーマネント・ウェーブ処理の中間で5%グロスフィリンPにて処理した毛髪は、中間処理無処理のコントロールに比べ、ウェーブ効果の低下が少なく、持ちを維持することが確認された(図2)。
ブリーチ処理に使用される過酸化水素水の消去試験では、グロスフィリンPには毛髪に付与してすぐに過酸化水素水を消去する効果が見られ、付与5分後、10分後にはへマトポルフィリンと同等以上の強力な消去作用が認められた。
また、市販の2剤式パーマネント・ウェーブ剤の第1剤をメルカプタン臭源とし、検知管法にてグロスフィリンPの消臭作用を検討したところ、グロスフィリンPにはメルカプタン臭を消臭する作用が確認された。
同社は、白髪改善への効果も見出している。白髪は毛包メラノサイトのメラニン産生系の機能低下が原因の1つであり、白髪を遅らせるにはメラニン産生系の主要酵素であるチロシナーゼの活性化が有効であると考えられる。
グロスフィリンPにはへマトポルフィリンと比べ、強いチロシナーゼ活性促進作用が認められ、白髪予防にも効果が期待できる。
同社は、このグロスフィリンPに併せ、天然高分子ケラチン「プロティキュート」や、毛髪表面の18-MEAを補修する反応型ヒートリペアオイル「メドウラクトン VE(メドウフォーム-δ-ラクトン)」など天然由来のヘアケア素材もラインアップする。
「メドウラクトン VE」は、メドウフォームの種子油から作られたラクトン誘導体で、ドライヤーの熱により構造が変化し、毛髪中のアミノ基と化学結合することから、ダメージによって流失した毛髪表面の18-MEAに替わって結合し、髪に保湿感やなめらかなすべり感などの良好な感触を甦らせる(図3)。
コーミングテスターを使用し、ダメージ毛に対するすべり感や静電気量改善を計測したところ、ブリーチによるダメージを与えた毛髪に処理することにより、シリコーン(ジメチコン)と同等以上の改善作用が認められた。
その他、毛束に対する速乾効果やモニターによる刺激緩和効果についても確認されており、天然由来の機能性ヘアケア原料として提案を強化している。
同社では、各原料の製剤への配合のヒントとなるよう、具体的な処方例を会員向けサイト「ICHIMARU CHANNEL」で公開、同社内の処方技術者に直接相談できる相談室もオープンし、利便性を高める試みを行っている。