ライオン、国内外のベンチャー企業・研究機関への投資で事業機会の創出を加速

週刊粧業 2022年10月17日号 21ページ

ライオン、国内外のベンチャー企業・研究機関への投資で事業機会の創出を加速
 ライオンは今年8月8日、2030年に向けたオーラルヘルス領域の活動「LIONオーラルヘルスイニシアチブ」の一環として、社会価値と経済価値を生み出す新たな事業機会の獲得に向け、国内外のベンチャー企業・研究機関を対象に総額30億円の出資枠「LIONオーラルヘルスファンド」を設定した。

 同ファンドを立ち上げるに至った経緯と基本的な考え方について投資担当マネージャーの堀江弘道氏と横山準氏に、ファンドの概要や目的、今後の展望について投資担当ディレクターの近澤貴士氏にそれぞれ話を伺った。

 ――LIONオーラルヘルスファンドは、いつ頃から着想されたのでしょうか。

 堀江 コーポレートベンチャーキャピタルをライオンとして設立し、ベンチャー企業を応援しながら我々も成長していくということは数年前から構想があり、ファンドを立ち上げる以前からベンチャーキャピタルやイベント会社とネットワークを構築し、様々な接点を織り交ぜながら検討を重ねてきた。

 本格的に動き出したのは今年に入ってからで、まずは当社の主力事業であるオーラルヘルス領域に特化して開始することになった。

 ――同ファンドの基本的な考え方についてお聞かせください。

 横山 当社は「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」というパーパスを起点とし、2030年に向けた経営テーマとして「市場・経済・社会的プレゼンスの向上」を掲げている。

 事業成長は全ての事業活動の起点であるパーパスの実践によって果たされるものであると捉えており、中長期経営戦略フレーム「Vision2030」では、4つの提供価値領域(オーラルヘルス・インフェクションコントロール・スマートハウスワーク・ウェルビーイング)における成長加速を推進し、成長の方向性を定めた。

 このうち、オーラルヘルス領域では家庭にとどまらず、職域や自治体などお口の健康にかかわる全ての接点をつないで予防歯科行動を習慣化することを目指している。

 オーラルケアのさらなる事業拡大には、これまでのようにメーカーとしてハミガキやハブラシなどの製品を販売することに加え、生活者と直接的な関係性を持ったストック型の関係性のもとで、製品のみならずサービスも提供しながら体験価値を含めて提供できる事業形態に進化させていくことが欠かせない。

 当社では、このようなオーラルヘルス領域の基本的な考え方に基づく企業活動の施策を「LIONオーラルヘルスイニシアチブ」と設定した。中でも、社会価値と経済価値を生み出す新たな成長機会を獲得する基盤としての役割を果たすのが今回の「LIONオーラルヘルスファンド」ということになる。

 ――同ファンドの具体的な概要や目的と、今後の展望についてお聞かせください。

 近澤 目的としては前向きな予防歯科習慣づくりを後押しすることで人々の健康増進に貢献することであり、国内外のベンチャー企業、研究機関に向けた戦略的な投資を行い、事業機会の創出を加速していくことが大きな狙いとしてある。

 投資対象はオーラルヘルス領域に強みを持つ国内外ベンチャー企業と関連研究を行うアカデミアとし、投資担当が窓口となって様々なベンチャー企業やアカデミアと情報交換を行い、その後投資検討会にて最終的に意思決定を行う。

 ファンドの中でも特に「デジタル技術」が大きなキーテーマとなり、デジタル技術の拡大に寄与する法人や団体を対象に投資枠の活用を検討していく。

 投資に際しては、当社のパーパスと中長期経営戦略フレーム「Vision2030」に共感していること、予防歯科習慣化の実現に寄与し得る革新的な技術・ビジネスであること、既存事業とシナジー発揮できることを重視する。

 メーカーの域にとどまらず、生活者に機能価値と体験価値を提供するための今回の取り組みは、口腔健康データを利活用する「POHR(パーソナルオーラルヘルスレコード)」が大きな鍵を握ると捉えている。

 POHRのデータを利活用することで、疾患情報や行動情報まで把握できるようになれば、1人ひとりに合ったオーラルケアアイテムや予防習慣といったパーソナライズされたOne to Oneのソリューション提案が可能になり、既存事業とのシナジーも大いに期待できる。

 今後の活動計画として、まず初年度は基盤を固めることが重要であり、そのためにも網羅的な機会創出を行う環境づくりに向けて、ビジネスマッチングの基盤構築に努めていく。

 また、社外に向けてLIONオーラルヘルスファンドの認知を拡大するためには、ベンチャー企業に対して我々から積極的に発信していくことも重要であり、そのためのアピール施策として関連イベントの開催や情報発信メディアの整備などを順次進めていく。

 我々が目指す人々の健康意識を高めて予防歯科習慣の定着につなげるためにも、ベンチャー企業や研究機関とのこれまでにない新たな協業の形が必要であり、これにより革新的な製品・サービスの提供をスピーディーに実現できるものと期待している。
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