資生堂、赤色光に表皮細胞の増殖促進効果・炎症軽減効果を発見

週刊粧業 2022年11月18日号 4ページ

カンタンに言うと

  • 赤色光透過率を1.2倍に高めたサンスクリーン基剤を開発
資生堂、赤色光に表皮細胞の増殖促進効果・炎症軽減効果を発見
 資生堂は、赤色光に表皮細胞の増殖を促す効果と皮膚の炎症軽減を促す効果があることを発見した。

 3次元表皮モデルや皮膚組織の培養モデルを用いて、赤色光が表皮基底層の細胞増殖を高めることを確認し、赤色光が表皮恒常性の維持に関与していることが示唆された。加えて、ヒト試験により、赤色光が角層バリア破壊後の皮膚の炎症を軽減させる効果を示すことを確認した。研究成果の一部は日本美容皮膚科学会(2022年8月6~7日)で発表した。

 独自のR&D理念「DYNAMIC HARMONY」のHuman/Earthというアプローチのもと、環境とポジティブに調和・共生し、美を生み出すことを目指した「環境調和・共生技術」の開発に取り組んでおり、今後も光をはじめとしたさまざまな環境と肌との関わりを明らかにし、自分らしい健やかな美しさを実現する新たな価値の創出に取り組んでいく。

 同社は、紫外線による光老化の研究をはじめとして、近年はブルーライトや赤外線など、光が肌に与える影響について幅広く研究を進めてきた。今回着目した赤色光は、目に見える可視光線の中で波長が長く、皮膚のより深くまで透過する光で、細胞増殖などの効果については様々な細胞で研究が進められているが、皮膚の最外層に存在する表皮に対する効果については未だ詳細には解明されていないことから、今回、赤色光が表皮に与える効果について研究を進めた。

 まず、3次元表皮モデルにおいて赤色光を単回照射し細胞増殖に関わる因子を評価したところ、表皮基底層において増殖性を示すタンパク質であるKi-67陽性細胞数が有意に高まることを確認した。さらに、皮膚組織の培養モデルにおいて赤色光を複数回照射し同様の評価を行ったところ、3次元表皮モデルと同様にKi-67陽性細胞数が有意に高まることを確認した。これらにより、赤色光が表皮基底層の細胞増殖を促し表皮恒常性の維持に関与していることが示唆された。

 赤色光の効果について、培養実験だけでは捉えきれない事象を観察するため、ヒト試験により角層バリア破壊後の皮膚に与える効果を調べた。テープストリッピングにより、20~30代の被験者の角層バリアを破壊し、その後赤色光を照射してバリア破壊によって生じる炎症状態の変化を観察した。その結果、バリア破壊によって高まる赤みスコアが、赤色光を照射した部位において1時間後に未照射部位に比べて減少しており、赤色光がバリア破壊による炎症を軽減することを確認した。

 また、より多くの赤色光を肌へ届けることを目指し、肌への悪影響が大きいUVA、UVBは防ぎながら、赤色光の透過率を高める基剤の開発に挑戦した。今回開発した赤色光透過率を高めたサンスクリーン基剤は、同社の赤色光透過率が低いサンスクリーン基剤と比較して、透過度を約1.2倍高めることができた。

 同社は、「環境とポジティブに調和・共生し、美を生み出す」ことを目指し、変化が著しい外的環境のさまざまな要素を美の力に変えていく「環境調和・共生技術」の開発に取り組んでいる。2021年に発表した「紫外線」に続き、22年は「乾燥(低温・低湿度)」や、「湿度」に着目した技術を発表した。

 今後も気候変動やライフスタイルの変化が顕著な現代社会において、多様な自然環境中の要素を美の力に変える革新的な「環境調和・共生技術」の開発を進めていく。
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