花王、つくば蘭展にて、再現した希少な蘭の香りを展示

粧業日報 2023年2月2日号 3ページ

カンタンに言うと

  • ユニークで多様性に富む蘭の香り研究の成果を披露
花王、つくば蘭展にて、再現した希少な蘭の香りを展示
 花王は、蘭の香りの多様性に着目し、国立科学博物館 筑波実験植物園と共同で研究を行い、共同研究により再現した蘭の香りなどを、1月22~29日に開催された「つくば蘭展(筑波実験植物園)」にて展示した。

 ラン科は、生物多様性の成り立ちを生涯追求したダーウィンをして「蘭の構造の無限ともいうべき変異ほど、私を感動させたものは他にない」と言わしめた、植物で最も種数の多い科の1つ。世界中でこれまで約2万8000もの種が記録され、今なお毎年数百の新種が発見されている。さらに、種数だけでなく色や形のバラエティ、さまざまな動物や菌類との共生、乾きや暗さをものともしない多彩で自在な暮らしぶりも特徴で、蘭はしばしば生物多様性のシンボルとされる。

 しかし、日本に生息する蘭の約65%の種は環境省によって絶滅危惧種に指定され、地球規模では約4分の1の種に絶滅のおそれがあると推定するデータもあるように、蘭は生態系の脆弱さを象徴する植物でもある。

 花王は、このような蘭に着目し、約3200種類の生きた蘭の株を保有し国際的な蘭保全の拠点として活動している筑波実験植物園と共同で蘭の香りの多様性について研究を行ってきた。2017年より筑波実験植物園が保有する167種(のべ210個体)の蘭の香りについて、社内の調香師の鼻による香調解析と、精密分析機器を使った香気成分解析の2つの方法で調査し、その成果を第23回世界蘭会議(2021年4月・台湾)にて、オンライン発表している。

 調香師による香調解析では、対象となる蘭の香りは、柑橘類を彷彿させる香りやフローラルな香りから、スパイシーな香り、グルマン調の香り、アニマリックな香りまで幅広く、15種もの香調に分類できることが明らかになった。さらに、遺伝的に近縁の種であっても香りは多様で、進化とともに香りがダイナミックに変化していることがわかった。

 また、機器分析からは合計887種類の香気成分を同定した。今回の分析では、1種の蘭にしか見つけることができなかった稀な香気成分が非常に多く存在し、全体の38%(337成分)を占めた。バラの香気成分はおよそ300~400種類といわれているが、長年にわたり詳細に研究されてきたバラと比べても倍以上もの成分が確認され、しかも稀にしか検出されない成分の割合が多いことが示された。

 調査対象は世界の1%に満たない種類だが、蘭は他の園芸植物と比べ花の香りがはるかに多様で、バラやジャスミンのように「これが蘭の香り」といえる典型的な香りは存在しないことがわかった。さらに、個性的でユニークな香りを持つものが多く、通常の花の香りからは想像がつかないような「未体験の香り」も発見されるなど、香りの面から蘭の奥深さとその秘めた可能性の一端を明らかにすることができた。

 同社は今後も、未知の香りを自然から学び、その香りを製品に応用し新たな価値を生むことで、生活を豊かにすることに貢献していく。さらに、1つの蘭が絶滅してしまうと、地球に2つとないユニークな香りも永久に失われてしまうという観点からも、蘭の香りの探求を通じて生物多様性を守る取り組みを進めていく。
ホーム > 化粧品業界人必読!週刊粧業オンライン > 花王、つくば蘭展にて、再現した希少な蘭の香りを展示

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop