コーセー、美しさに対する多様な価値観を測る心理指標を開発

粧業日報 2024年11月27日号 3ページ

カンタンに言うと

  • 美容価値観から明らかになった日本特有の調和志向
コーセー、美しさに対する多様な価値観を測る心理指標を開発

 コーセーは、コペンハーゲン商科大学 経営・社会・コミュニケーション学部の加納史子准教授との共同研究により、美容価値観(美しさに対する価値観)を5つの要素で測定できる世界共通の心理指標を開発した。この指標を用いることで、一人ひとりが持つ美しさの価値観を17タイプに分類することができ、より顧客の心に寄り添った商品やサービスの開発や提供が可能となる。

 また、この指標を用いて分析することで、日本が世界でも社会調和性が相対的に優位な美容価値観をもつことが明らかになった。研究成果の一部は、第29回日本顔学会大会(2024年11月2~3日、岩手県)にて発表した。

 社会の急速なグローバル化やソーシャルメディアの普及により、多くの人が地域や言語の境界を超え、互いの文化や考えにアクセスできるようになった。その結果、様々な刺激に影響を受け、従来の年齢・性別・地域制だけでは区切ることができない価値観の多様化が進んでいる。

 価値観は様々な意思決定の基準となりうる要素であり、最終的な消費行動にもつながることから、一人ひとりの価値観を理解することは顧客の真のニーズに近づくことを意味する。しかし、その多様化した個人の価値観を測る指標は乏しく、特に美しさに対する手法は確立されていなかった。そこで、同社では美しさの価値観を測る指標を開発し、グローバルの顧客を価値観の側面から理解することを試みた。

 美容価値観を測る心理指標を開発するため、デンマークに住む欧州9カ国多国籍の男女13名を対象に、美しさに対するインタビューを行い、美しさを求める価値観の構成要素を洗い出した。次に、それらを美容価値観として測定するための設問の作成を行った。

 イギリスにおいて調査を繰り返すことで、設問と指標の妥当性を検証し、その後、イギリス・アメリカ・デンマーク・日本においても妥当な設問と指標になっていることを確認した。最終的に14の設問から構成される美容価値観調査票を開発し、同時に、美しさの動機は、社会調和性・他者優越性・自己研鑽性・内面性・個性尊重性の5つの要素からなる円環モデルで表せることを提案した。

 開発した美容価値観調査票を用いて世界8カ国(日本・アメリカ・イギリス・デンマーク・フランス・ドイツ・中国・台湾)の15~84歳男女計1万2712人を対象にWebアンケートによる調査を行った。

 その結果、各国ともに内面性が高く重視される一方、その他の構成要素の重要度に違いが見られた。アメリカ・フランスは個性尊重性と自己研鑽性を、中国・台湾は全ての構成要素を強く重視することを確認した。ドイツは若年男性層の回答が多かったものの、中国・台湾と同様の傾向を示した。また、イギリス・デンマークでは個性尊重性を重要視し、一方日本では、すべての重要度が低く、他国と比較して相対的に社会調和性が優位であることが示唆された。

 さらに、5つの美容価値観の違いから、個人ごとに価値観のパターンを分類することで、17の美容価値観タイプに分けることができた。これらの個人のパターンを国ごとにタグ付けしてマッピングすることで、国ごとの美容価値観タイプの分布傾向を可視化し、各国の美容価値観の違いを把握することができた。

 なお、マッピングのゾーンにより5つの美容価値観のどこが強いかも同時に把握することができる。ここでも、日本は他国と異なる価値観を持っていることや、同じ欧州であってもフランスやドイツのように文化背景により異なる美容価値観の傾向を示すことを確認した。

 今回、同社独自の美容価値観の指標を整備することにより、顧客をこれまでの年齢・性別・地域といった表面的な属性ではなく、心にある価値観をもって分類・理解することが可能となった。この成果は世界の顧客の価値観に寄り添った商品開発やサービス展開へと応用していく。今後も、8カ国から地域を拡げての検証や、実際の美容行動とのつながりの研究など、世界の一人ひとりが望む「きれい」の実現に向けて研究活動に邁進していく。

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