ライオン、3歳までに口腔細菌叢の基盤が確立されることを確認

粧業日報 2024年11月29日号 2ページ

カンタンに言うと

  • 乳幼児期の縦断研究から口腔細菌叢の形成が進む時期を解明
ライオン、3歳までに口腔細菌叢の基盤が確立されることを確認

 ライオンでは、2015年から公益財団法人ライオン歯科衛生研究所と共同で、口腔細菌叢の形成過程を理解するため、子どもとその両親を対象に縦断研究を行っており、2021年には生後1週間~3歳時点での解析から、大人の口腔細菌叢に近づく重要な時期が生後6カ月~1歳半であることを明らかにしている。今回、新たに5歳までの解析を進めた結果、口腔細菌叢の基盤が3歳までに確立されることを見出した。

 この一連の研究成果は、10月12日付で国際歯科研究学会(IADR)、国際歯科研究学会米国部会(AADOCR)の歯科学分野を網羅する科学雑誌「Journal of Dental Research」に掲載された。

 今回の研究では、大人の細菌叢に近づく時期を明らかにするため、5歳までの口腔細菌叢の形成過程を、大人(両親)の口腔細菌叢と比較することにした。2015年6月~2017年1月までに生まれた54名の子ども(男児27名、女児27名)とその両親を調査対象とし、両親からは子どもが1歳半と3歳になった時点の計2回、洗口吐出液として唾液を採取した。

 一方、子どもたちからは生後1週間、1カ月、3カ月、6カ月、9カ月、1歳、1歳半、2歳、2歳半、3歳、3歳半、4歳、5歳時の計13回のタイミングでスワブに浸み込こませて唾液を採取した。さらに5歳時には、両親と同じ方法の洗口吐出液としても唾液を採取した。採取した唾液に含まれる口腔細菌由来の遺伝子配列を次世代シークエンサーで読み取り、口腔細菌叢の経時変化を解析した。

 父母それぞれ85%以上の人から検出された菌種を、大人の口腔細菌叢を構成する主要な細菌と定義し、子どもからの検出率の推移を調査した結果、生後6カ月~1歳半にかけてこれら細菌の検出率が急激に増加し、1歳半で約8割、3歳で約9割が検出され、3歳以降5歳までは大きな変化はみられなかった。また、1歳半までに検出されるようになった菌種には、Neisseria属やHaemophilus属などのう蝕や歯周病の予防に寄与する可能性のある硝酸還元細菌のほか、多様な菌種が含まれていた。

 次に、細菌叢の類似度を評価する距離指標(Weighted UniFrac距離)を用いて、子どもの口腔細菌叢が大人の口腔細菌叢に近づく時期を調査した。その結果、1歳半までに大人の口腔細菌叢に大きく近づき、3~5歳の間には有意な変化は確認されなかった。また、子どもの口腔細菌叢がどのくらい大人に近づいたのか、口腔細菌叢の形成度を評価するために、大人と同じ採取法で取得した5歳のデータを大人と比較した。その結果、5歳時点の子どもと大人の口腔細菌叢との距離は、大人同士の口腔細菌叢の距離(大人間の個人差)よりも小さく、大人の個人差の範囲内に収まることが確認された。

 以上の結果より、3歳までに大人の口腔細菌叢を構成する主要な菌種の多くが口腔内に定着し、3~5歳にかけて大人との類似度に有意な変化はなく、5歳時点での口腔細菌叢は大人と比較しても大差がないほど形成が進んでいることがわかった。今回の縦断研究により、3歳までの期間が子どもの口腔細菌叢の基盤が確立する時期であることが示唆され、特に1歳半までの期間においては、口腔細菌叢の形成が急激に進行し、う蝕や歯周病の予防に寄与する可能性のある細菌も構成菌種に加わることが明らかとなった。

 今回得られた知見から、子どもの乳歯が生え揃う3歳頃までの口腔細菌叢形成が、生涯にわたり良好な口腔状態を維持するために重要であることが示唆された。

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