カンタンに言うと
ヒト幹細胞培養液を日本に初めて導入し、現在も化粧品原料として提供を続けているアンチエイジング(牛島美樹社長)は、昨年より提案を開始した「Pentide-NMN」の引き合いが順調に増加している。また、Pentide-NMNと、リポソーム化したヒト幹細胞培養液を組み合わせて濃縮エクソソームを添加した「RS Liposome 3.0E NMN」についても提案を強化する。
近年、NMNが注目を集めている。サプリメントとしてのNMNは、細胞内でNAD+に変換され、アンチエイジング遺伝子であるサーチュイン遺伝子を活性化することが報告されている。
一方で、化粧品原料としてのNMNには、多くの課題があった。安定性や皮膚浸透性の低さなど成分が持つ特徴による課題のほか、特許による制限もあり、化粧品へのNMNの配合事例は限られていた。
これらの課題を解決したのが、昨年から提案を開始した浸透型NMN誘導体「Pentide-NMN」で、CITE JAPAN 2021アワードで技術部門金賞を受賞した、浸透型ペプチドをビタミンCの安定に用いた原料「Pentide-C」の技術を応用した原料となっている。
Pentide-NMNは細胞膜への吸着性が高く、受容体への接触率が上がり、細胞内へ取り込まれやすくなっている。塗布すると皮膚へ浸透し、皮膚細胞などの組織内でNMNへ変換され、その後NAD+に変換されることで、さまざまな効果をもたらす。
老化した細胞にPentide-NMNを添加すると、NAD+が増加することが確認できている。NAD+を増加させると、老化を抑制する「サーチュイン遺伝子」が活性化する。
線維芽細胞を老化誘導した実験では、Pentide-NMNの添加で老化によって低下したサーチュイン遺伝子の発現量を増加させた。サプリメントとしてのNMNの機能を、化粧品として使用した際にも再現できることが期待される実験結果となった。サーチュイン遺伝子の増加量についても、通常のNMNより多いことがわかった。
老化誘導により増加した線維芽細胞内の活性酸素の減少効果についても、Pentide-NMNは濃度依存的にROSレベルを回復させることが確認できたため、細胞の抗酸化作用を増強することが示唆された。
老化誘導した線維芽細胞にPentide-NMNを添加すると低下していた細胞分裂能が改善し、細胞増殖が促進されることも確認できている。
安定性の課題については、40度の条件下でPentide-NMNとNMNの熱安定性の比較を行った。NMNは3日後には100%分解されてしまうが、Pentide-NMNは15日後でも82.5%の高い活性を維持していることが確認できている。
皮膚浸透性の課題については、人工皮膚モデルにおける皮膚透過率実験も実施している。通常のNMNでは24時間でほとんど浸透性がみられなかったのに対して、Pentide-NMNでは24時間で27.6%と優秀な皮膚透過性が確認された。
炎症細胞に対しての効果も期待されている。LPS刺激モデルの単球を使用して炎症性サイトカインTNF-α分析を行ったところ、NMNと比較してPentide-NMNは優れた細胞透過性と高い生体内利用率によってNMNよりも強くTNF-αを抑制した。炎症により減少したNAD+を濃度依存的に回復させることも確認できている。
通常のNMNの大きな課題の1つだった特許による制限についても、Pentide-NMNは独自で特許を取得した「ジヒドロナイアシンアミドリボシドアセチルトリ―t―ブチルトリプトファン」という新規物質のため、既に化粧品の表示名称として登録されている通常のNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)とは完全に別の物質として登録されている。これにより、特許に縛られることなくNMNを使用することができるようになっている。
このようにして従来のNMNの課題を解決したPentide-NMNは、注目の成分を紹介している冊子「栄養書庫ブックレット」でも2024年12月に「浸透型NMN誘導体の美容力」として取り上げられている。
「Pentide-NMNは提案開始からまだ1年が経過していないが、既に10社以上での採用実績があり、NMNの注目度の高さを改めて実感した。2025年以降はさらに需要が拡大するのではないかと予想しているため、今後さらに提案を強化していく」(同社)
一方、Pentide-NMNと、ヒト幹細胞培養液「RemyStem」を組み合わせ、濃縮エクソソームを添加した化粧品原料「RS Liposome 3.0E NMN」にも引き続き注目が集まっている。
RemyStemは、同社で取り揃えている全てのヒト幹細胞培養液の起点となっている原料で、純粋な100%のヒト幹細胞培養液に、品質保持のため3%の1,2-ヘキサンジオールを添加している。
エクソソームについても、近年非常に引き合いが多くなっている。エクソソームは、幹細胞の状態や培養方法によってその機能が大きく異なる特長を持つ。
アンチエイジング社では、独自のローリングボトル培養法を採用している。通常のフラスコ培養よりも、ローリングボトル培養の方が、幹細胞培養液の主要機能性成分であるエクソソームや成長因子などのタンパク質の生産量が増加することが確認できている。
同社では、独自のローリングボトル培養によって幹細胞から分泌されたエクソソームについても、ヒト幹細胞培養液同様、さまざまな機能性についての試験を行っている。
最も特徴的な試験結果は、光老化を誘導した線維芽細胞を若返らせたものだ。
エクソソーム=若返りというイメージもあるが、全てのエクソソームにこの機能があるわけではなく、確認するまでは不明といえる。アンチエイジング社のヒト幹細胞培養液やエクソソームについては、実験によりこれらの機能の確認を行っている。
RS Liposome 3.0E NMNに添加されているエクソソームは、従来品である「RS Liposome 3.0」と比較すると約2倍のエクソソームが含まれており、全成分表示にも「ヒト脂肪由来間葉系細胞エクソソーム」が表示できるようになった。
NMNとエクソソームは、いずれも老化の改善効果が期待されているが、エクソソームは遺伝子のスイッチをオフにすることで老化を改善し、NMNは遺伝子のスイッチをオンにすることで老化を改善すると考えられている。
異なる作用機序で細胞の老化抑制を行っていると考えられていることから、ヒト幹細胞培養液とNMNを組み合わせることにより、老化改善について大きな相乗効果が期待できるという。
同社は「Wアンチエイジング」のキャッチコピーのもと、RS Liposome 3.0E NMNの提案にも取り組んでいく。
この記事は週刊粧業 2025年1月1日号 92ページ 掲載
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