木村産業では、欧州のサステナビリティやSDGsのトレンドを踏まえた化粧品原料を提案している。
Provital社に長年ある原料の1つ「Melavoid」は、総合的なブライトニング効果を有している。
MelavoidはPPARγへの結合による2つの作用に基づいたコンセプトとして、予防と改善の2本柱として採用している。メラニンの合成の初期段階で作用する予防効果と、肌のトーンを均一化し、シミの数の低減やシミを薄くする改善効果を通して、あらゆるタイプのシミを軽減し、肌のトーンの均一化に導く。
PPARγとは、メラノサイトやさまざまな細胞の遺伝子発現を調整する受容体のことを指す。色素沈着の原因となるマイクロフタルミア関連転写因子(MITF)の調節遺伝子等、特定の主要なメラニン形成調節因子に作用するため、メラニン形成調節因子ではなくMelavoidの成分とPPARγを結合させることで、チロシナーゼの発現を調節し、メラニンの生成を抑制させる。PPARγと結合する成分として、ナカハノコソという植物の根から抽出する活性成分「ボエラミノン」を採用している。
In vitro試験では、Melavoidを配合した溶液でNHEM(正常ヒト皮膚メラノサイト)を培養し、さまざまな試験を行った。
PPARγとの結合親和性については、もともとPPARγと結合していた蛍光性リガンドと入れ替わってMelavoidの成分が結合したことから、良好な結合親和性が確認された。
チロシナーゼの発現の測定では、試験終了後、Melavoidを配合した溶液が配合していない溶液と比較してチロシナーゼ酵素の形成を63%も抑制することが確認され、メラニンの生成抑制効果が大きく現れる結果となった。
メラニン合成の評価の測定にあたっては、コウジ酸との比較試験も行われた。
コウジ酸も、メラノサイトによって合成された色素沈着を低減する効果が確認されており、ブライトニング効果を持つ成分の1つとして知られているが、培地における毒性効果も有していることから、培養物中のタンパク質量を低減するなど、他の細胞に悪影響をもたらしてしまう側面もある。
Melavoidは、コウジ酸と同等のブライトニング効果を持つだけでなく、コウジ酸では減少していたタンパク質量が低減しなかったことが明らかになっている。
コウジ酸も使用して行ったIn vitro試験では、Melavoidはメラノサイトの樹状突起の数を低減させた。これにより表皮ケラチノサイトへのメラニンの移動量の低減や、表皮における色素の蓄積の抑制効果があることが分かった。
アジア人女性を対象に行われたin vivo試験では、Melavoidが配合された溶液とプラセボをそれぞれ半顔に塗布し、56日間使用しての変化を調べた。評価にあたっては、4㎜以上の大きさのシミがあるエリアとシミのないエリアそれぞれで調査を行ったところ、シミのある皮膚の部分で平均5%のITA°パラメータ増加が見られた。シミの無いところでも28%の増加が見られたことから、シミの無いところにもブライトニング効果をもたらすことが確認された。
皮膚表面のシミ、日光黒子、肝斑の3種類のシミそれぞれへの効果も確認したところ、いずれのシミに対しても数の減少や薄くなる変化が見られたことから、さまざまな要因のシミに対して改善効果があることが分かっている。
推奨用途としては、肝斑をターゲットとした高趣味商品や色素沈着のボディトリートメント、高趣味のハンドトリートメント等幅広い用途で推奨している。国内でも多くの採用実績があるが、現在はスキンケアでの採用が中心となっているという。
一方、Aiglon社の「Naturelyn DP 60」は、安定性に優れた100%天然由来のオイル増粘剤で、少量の配合量で増粘効果を得ることができる。透明処方に使用することができるほか、エマルジョンに配合することで質感の改善や安定性の向上も期待される。
国内では化粧品の製造時に100度以上で処理することが多いが、欧州では環境配慮の観点から、化粧品や化粧品原料の製造時に熱を一切使わない、もしくは、できる限り低温で処理する製造方法が好ましくなってきている。Naturelyn DP 60も、100%天然由来であるだけでなく、製造時に必要な温度が約60~75度と比較的低温での使用が可能な顆粒タイプとなっているため、環境に配慮されつつも扱いやすい増粘剤になっているといえる。
In vitro試験により耐水性やSPFのブースト効果の特徴も確認されており、後者については比較試験が行われている。紫外線吸収剤を使用したサンクリームについて、Naturelyn DP 60を配合していない処方のものをプラセボとして比較したところ、約60%の優位性があることが確認された(グラフ参照)。
主な用途としては日やけ止め、スキンケア、カラーコスメ、ヘアケアの商品に使用することができる。特に日やけ止めに使用することで、増粘剤としての役割だけでなくSPFのブースト効果や耐水性を付与することができる。ヴィーガン認証をはじめとしたさまざまな法令にも準拠しており、NMPAも登録済みのため、中国向けの製品にも配合できる。
Naturelyn DP 60は上市が昨年4月だったこともあり、国内での提案はこれから強化する段階にある。今年5月に開催される「CITE JAPAN 2025」でも紹介を予定しているという。
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この記事はC&T 2025年3月17日号 46ページ 掲載
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