週刊粧業 2025年4月14日号 2ページ
カンタンに言うと
アイ・ティー・オーはメディカルコスメと原料開発やOEM受託、原料供給により、医療機関に特化したビジネススキームを構築している。さらにセミナー開催や学会での研究発表などによって、美容医療の普及に取り組んできた。
日本では医師を介した化粧品(医療機関専売化粧品)の普及が遅れている。メディカルコスメを目指す医師をサポートすることにより、市場の拡大に寄与する。さらに、地方の保険診療医にも寄り添い、スタッフ向けスキンケア研修などを通してクリニックの経営をサポートしていく。
2月15日付で伊東忍代表取締役CEO、永田武代表取締役COOが就任し、新体制がスタートした。伊東CEOは生化学が専門(再生医療分野で医学博士)で、メディカルコスメの中でもパーソナライズコスメを重視する。永田COOは研究一筋の技術者で、主に美白原料を専門とする。この2名を経営のトップとして、「従来の医療機関への貢献を踏襲し、製品開発をはじめ、より一層医療機関に寄り添って、信頼される企業を目指したい」と語る。
伊東CEOは化粧品市場の伸びが鈍化する中、ドクターコスメ、メディカルコスメ市場は、今後5年間で10%以上の成長を遂げ医療機関に特化したビジネスのポテンシャルが大きいと見る。「弊社が主にサポートしているクリニックは皮膚科、形成外科などの保健医療機関で、自由診療専門医は少ない。一般外来を通して提供するクリニック専売化粧品に力点を置いている」
同社には「AP5」「STI」の代表的なブランドがある。AP5はプロビタミンCを配合したスキンケア製品で、STIはナノカプセルのDDS(ドラッグデリバリーシステム)技術によってプロビタミンCを浸透させる抗老化用の高付加価値ブランドだ。
「弊社はこの2ブランドを主に供給するが、男性医師の中には化粧品を扱った経験がないケースもあり、これら2ブランドを第一段階として化粧品にふれてもらい、次の段階で“保湿性をより強化したい”など、個々の医師の依頼に基づきOEM事業につなげ、さらにそれぞれの医師が目指すパーソナライズされた化粧品の開発が始まる。
このように医師が化粧品に興味をもつと、医師のニーズが反映された今までにないドクターコスメの開発につながっていく」(伊東CEO)
また、クリニックの中には調剤室を持つ所もあり、ここで化粧品を院内製剤する医師もいる。これらのケースには、原料やレシピ情報などを提供し、これがさらに発展すると、OEM製造するケースも出てくる。
「このようなドクターズコスメのインキュベーションをメディカルコスメベースで行うのが、弊社のビジネスのスタイルである」(同)
メディカルコスメは海外で先行し、中でもブラジルでは化粧品流通の30%以上がドクター経由になっているという。メディカルコスメが普及している国はホームドクター制が充実しており、健康問題はまずホームドクターに相談される。医師は日常の健康管理を担い、化粧品やサプリも提供する。
例えば、老人性の色素斑と診断されると、院内施術の後に、処方薬とともに推奨される化粧品やサプリ情報も提供される。
これらを背景に、ドクターコスメ市場が形成されている。化粧品のグローバルメーカーはこうした動きに着目し、各国のドクターコスメを買収し子会社化している。
日本の化粧品流通の一部も、こうしたドクターコスメメーカーを買収し、子会社化する動きが活発化している。
「日本の化粧品やサプリ流通の一部も、こうしたドクターを介した流通システムに変わる世界的潮流の中にある。弊社も海外売上比率が上がりつつあり、すでに南米、アジアのハブとなるドクターに製品を供給している」(同)
医療機関に特化したビジネスを展開していくうえで、GOVC、ナノスフィアなど独自の原料開発にも取り組んでいる。GOVCは、新規の多機能保湿持続型の両親媒性プロビタミンCで、化粧品産業技術展(CITE JAPAN 2021)にてアワード技術部門賞を受賞した。
ナノスフィアはリポソーム様の多層カプセルで、膜にGOVCを含有し、膜自体に抗酸化性をもたせた。抗酸化の多層皮膜(ラメラ構造)をつくることで、不安定なレチノールなどを配合しても一定期間常温で保持できる。今年のCITE JAPANでは、エクソソーム様ナノスフィアを一般企業向け原料として発表する。
さらに、その進化版の環境応答性ナノマシンを慶応大学薬学部と共同開発し特許も取得した。環境変化を認識しカプセルの中身をターゲット組織で自動放出する機能をもたせた。2026年の発売を予定している。
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この記事は週刊粧業 2025年4月14日号 2ページ 掲載
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