資生堂、次世代ミネラルサンスクリーン技術を開発

粧業日報 2025年4月15日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 世界初の処方技術、塗布後に紫外線散乱剤の分散状態が変化
資生堂、次世代ミネラルサンスクリーン技術を開発

  資生堂は、国立大学法人東京農工大学 大学院工学研究院 応用化学部門 稲澤晋教授との共同研究により、世界で初めてミネラルサンスクリーン(ノンケミカルサンスクリーン)処方にて、紫外線散乱剤が肌の上で最適な分散状態に変化する技術を開発した。この技術により、高い紫外線防御力を発揮しながら、透明で均一な防御膜を形成する新しい日やけ止め製剤を提供することが可能になった。これまでミネラルサンスクリーン処方の課題だった塗布後の白浮きを軽減させ、紫外線散乱剤が肌のキメまでムラなくフィットするため、紫外線防御力は最大2.2倍(新技術未搭載の場合との比較)を実現した。

 日やけ止め技術に新たな価値をもたらすとともに、従来のタブーに敢えて挑戦する逆転の発想により、100年以上にわたる紫外線研究に新風を吹き込むことに成功した。新技術は、日やけ止め製剤の開発において、従来タブーとされてきた「凝集」状態(紫外線散乱剤の粒子が集まって繋がった状態)をあえて使い、肌の上で均一な分散状態へと徐々に変化させることで実現されるという。一般的に「凝集」状態は、機能が低下するため敬遠されていたが、逆転の発想により日やけ止め技術の新たな価値へと転換することができた。

 同社は100年を超える紫外線研究により、水や汗、熱によって塗布膜の紫外線防御機能を高める技術や紫外線を美肌光へと変える技術、傷やよれを自動で修復する技術など革新的な日やけ止め技術の開発を行ってきた。今後も常識に捉われない技術開発を通じて、人と自然が共に生きていく世界を目指す。なお、この研究成果は、化粧品技術に関する世界最大の権威ある研究発表会IFSCCの口頭発表応用部門で最優秀賞を受賞し、次世代の化粧品技術として高く評価された。

 紫外線散乱剤はたくさん配合すると紫外線防御力は高くなるが、肌が不自然に白浮きしやすくなる。一方で、濃度を低くすると白浮きは防げるが紫外線防御力は低くなるというジレンマが存在していた。同社はこの課題に対処し、生活者の多様なニーズに応えるべく、紫外線散乱剤のみを使用したミネラルサンスクリーンにおける新しい製剤技術の開発に取り組んだ。仕上がりは透明な素肌のままに、しっかりと紫外線ケアができる新発想のミネラルサンスクリーン製剤を目指した。

 今回の新たな日やけ止め技術は、肌に塗布すると、凝集していた紫外線散乱剤が肌の上で均一な状態へと自発的に変化し、肌の形状に合わせて透明な均一膜を形成する。成分の一部が空気に触れて揮発するという変化をきっかけにして、凝集していた紫外線散乱剤が自動的にほどけて、均一に分散していく。時間の経過とともに、塗布した膜の見た目は白く濁った状態から透明な状態へと変化し、同時に紫外線防御機能も上昇していく。成分の種類や量の調節によって、この変化が起きる時間をコントロールすることも可能だ。

 従来は、処方の中で紫外線散乱剤を均一に分散する工夫が行われてきたが、粒子が流動しやすいため、肌のキメに流れ落ちる現象(キメ落ち)が起こると、紫外線防御機能低下の一因となることもあった。紫外線散乱剤を凝集させておくことで塗布膜が流動せずに肌にフィットするため、キメや毛穴に日やけ止めが溜まりにくく、紫外線防御に重要な均一な膜を形成することができる。

 今後も柔軟な発想の転換により、高い紫外線防御効果と、優れた使用感を高い水準で両立する商品を提供するために、日やけ止めにとどまらず、下地などの化粧品カテゴリーにおいても数々のチャレンジを続けていく。

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