カンタンに言うと
ライオングループは「自ら、キャリア・仕事・働き方を主体的に考えて行動し、高い生産性で業務に取り組む人材を創出していくこと」を人材開発のコンセプトとしている。一人ひとりの社員が、高い働きがいを実感しながら、自己成長をし続けていくことが必要不可欠という方針のもと、一人ひとりの自己実現に寄り添った支援施策を用意するだけでなく、社員の成長を促す風土づくりにも全社をあげて取り組んでいる。
「自律的に知識を習得して、経験を積むことで、自己成長を遂げる人材の育成を支援し、多彩な能力発揮を促していきたい」と語る人材開発センターの山本史織部長に、優秀な人材の獲得に向けた取り組みや同社が進める人材開発戦略について話を伺った。
――優秀な若手人材の獲得に向けた取り組みについて教えてください。
山本 会社が成長しないとベースアップを含めた報酬は上昇していかないので、会社成長へ貢献できる人材を創り出すための教育投資を手厚くしている。これにより、人材の力で企業価値向上を実現し、さらに人材の報酬や教育への再投資を拡大するという好循環を実現したい。
人材獲得の競争は年々激しさが増してくることも踏まえ、魅力的な報酬水準の確保も必要となる。
2025年については、ベースアップが5%、定期昇給が平均1.29%、合計約6.3%の賃上げを実施する。これに合わせて初任給についても金額アップを予定している。
入社後の配属先のミスマッチを極力排除すべく、職種別採用を充実させるなど、専門性の向上とキャリアを実現しやすい環境づくりにも取り組んでいる。
採用情報のページに関しても、仕事紹介ページの内容を充実させている。今までも仕事紹介ページはかなり充実していたが、仕事内容についてより深く理解していただけるよう、営業、マーケティング、海外事業、経理、経営企画、ITデジタル、研究、生産など、実際にどのような仕事なのか、仕事内容や魅力について詳しく紹介している。
「働き方の多様化に対応した感性を刺激できるような環境づくりへ」
――御社ではここ数年、どのような人材開発戦略を進めていますか。
山本 ライオンでは様々な事業変革を進めており、人事についてもこの5年ほどは様々な変革に取り組んできた。2018~2024年にかけては、特に人事制度を中心とした各種制度というハード面で様々な仕組みの改革に取り組んできた。
前半(2018~2021年)は、自律的な働き方の実現や、より柔軟な働く環境の提供に向けて様々な取り組みを行った。テレワーク制度や服装自由化、オンデマンド型の学びのプラットフォーム「ライオン・キャリアビレッジ(LCV)」の導入を進めた。
後半(2023~2024年)は新人事制度を導入し、管理職の一部に対する職務型等級や役割型等級による仕事や役割に応じた給与体系へ見直しを行った。また、より経営目標と整合した形で個人の目標が展開されるよう成果に基づく目標管理の仕組みを導入した。
特に管理職については、ポストの職務定義に基づき、年齢を問わない適所適材任用を指向し、これまでよりも若い年齢の任用も行われている。
新人事制度の導入に合わせて職務・役割定義書を全社員に公開し、「会社が何を期待し、どのようなパフォーマンスを求めているのか」を明確化した。
また、当社においても社会の潮流に合わせて専門性のある人材の獲得・育成といった方向に舵を切っており、9つの職群を設けて、一人ひとりの専門性に合わせた教育を2025年からスタートしている。
例えば、マーケティングの職群の人材であれば、どこの組織に所属していても組織横断でマーケティングの専門性を高めるための教育プログラムを提供していく。これに呼応する形で、新卒採用に関しても初期配属分野を明確にした職種別専門コースで採用することも始めている。
「キャリアコンサルタント面談」
――キャリア形成支援に向けてはどのような取り組みを進めていますか。
山本 昨今、自律的キャリアということが叫ばれる中、会社側が配属を一方的に決めるのではなく、個々人がキャリアプランを描いて、会社側は個人のスキルやキャリアプランを活かし、いかに一人ひとりの成果創出を最大化できるかが問われている。このため、一人ひとりの人的資本を高めるための様々なキャリア形成支援制度を充実させている。
新入社員からベテランまで世代別のキャリア支援の仕組みも導入し、キャリアコンサルタントという国家資格を持つ人材開発センターのメンバーが社員のキャリア支援に直接関わっていく仕組みも構築してきた。
その延長上で、2020年より副業制度を開始した。自己申告制のもと、これまで延べ300件の活用実績がある。社外での経験を積むことで、新たな自分を発見し、自らの市場価値を高め、キャリアの幅を広げてもらうことや、副業で得られる外部知見や人脈等を活用し、ライオン社内で新たな価値創造につなげてもらうことを狙いとしている。
また、仕事をしていくうちに自らの適性に気づくこともあることから、年に1度、自分の望むキャリアを自己申告する仕組みを導入している。また、経営戦略上、重点的に強化していく領域(海外事業やオーラルヘルスケア分野、DXなど)については、意志とスキルのある人材の発掘を狙いとし、社内公募の実施を検討している。こうした取り組みを通じて、柔軟にキャリアチェンジができる機会も提供し、長期的に当社で活躍してもらえる環境を整備する。
「ライオン・キャリアビレッジ(LCV)」受講の様子
――これまで進めてきた人材開発の取り組みをいくつか紹介していただけますか。
山本 学びのスタイル変化に対応しながら自律的な学習機会を創出するため、学びのプラットフォームである「ライオン・キャリアビレッジ(LCV)」を2019年に導入した。プログラムは動画を中心としたe-ラーニングと少人数討議に分かれており、社内や社外の知見を学ぶことができ、e-ラーニングについては約600のコンテンツを提供している。海外にも順次導入を始めている。
「働きやすい職場づくり」に向けては、2023年に本社を移転したのを機に、働き方や働く場所をより柔軟にしていくべく、職場ごとに柔軟にテレワークと出社を組み合わせて働けるような環境づくりに取り組んできた。本社オフィスは、一人で集中できるブースや、オープンにコミュニケーションが図れるスペースなど、働き方の多様化に対応した感性を刺激できるような環境を用意している。
一人ひとりが自身のキャリアプランを描く上で職務・役割定義書だけでなく、各部所内の仕事を可視化してまとめた「お仕事図鑑」を作成している。加えて、職群別の専門性・能力要件も社員へ示すなど個人が目指すスキルや能力を高め、キャリアを磨きやすい情報開示を積極的に推進している。
「2nd STAGE 新人事戦略」
――今後の人材開発戦略の方向性について教えてください。
山本 今後はこれまで整備してきた制度や仕組みを活用し、一人ひとりが会社の「稼ぐ力」の向上に貢献できることを目指していく。
2025年以降は「収益力の強靭化」という会社方針に基づき、事業ポートフォリオに連動した人材の育成と配置を進め、経営戦略と人事戦略の連動性をより一層強めていきたい。
これまでの人材開発では、「自律的な個の成長」に軸足を置いてきたが、今後は個々の人的資本を高めるだけではなく、「個の成長を組織として最大限に引き出す」ことが問われており、個人の成長促進とともに、その個人の力を結集させ、組織やチームで大きな成果を生み出せるよう各種人事施策に取り組んでいく。
今後も人材開発への投資を積極的に行い、マネジメント層の能力開発をより一層強化するとともに、女性社員の管理職登用など人材の多様性も活かしていくような組織風土づくりにも注力していきたい。
この記事は週刊粧業 2025年4月21日号 2ページ 掲載
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