ライオン、日本IBM健保の2万人の健診・レセプトデータを解析

粧業日報 2025年6月13日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 口腔ケアで従業員の生活習慣や口腔健康の改善に貢献
ライオン、日本IBM健保の2万人の健診・レセプトデータを解析

 ライオンは、日本アイ・ビー・エム健康保険組合(日本IBM健保)と共同で、日本IBM健保が保有する大規模な健診・レセプトデータを活用した調査研究を行った。毎年2万人が受診する健康診断データに加え、歯科健診・レセプトデータの2014年~2023年までの10年間のデータを分析することで、オーラルヘルスケアに関わる複数の知見を得ることができた。

 その1つに職域での口腔ケア促進が、従業員の生活習慣改善や健康増進につながる可能性が挙げられる。研究内容は、2025年5月14日~17日に開催された「第98回日本産業衛生学会」にて、同社と日本IBM健保が共同で3演題を発表し、うち1演題「歯科予防プログラムが口腔ケア習慣及び口腔状態に与える影響」が産業歯科保健部会優秀演題賞を受賞した。

 歯周病は、初期段階では痛みがなく出血などの軽微な症状が見過ごされ、症状が顕在化する頃にはすでに重篤化していることが多い疾患であるため、定期的な歯科健診での早期発見と、プロケア・セルフケアによる予防が重要になる。そこで日本IBM健保では、独自の歯科予防プログラム「p-Dental21」を推進している。

 研究では、「p-Dental21」が参加者の口腔ケア習慣を含む生活習慣、口腔状態に与える影響を明らかにすることを目的として日本IBM健保の保有するデータを分析した。2014年~2018年の5年間における「p-Dental21」への参加回数に着目し、参加回数が2回以上の「高頻度群」(n=2054)、参加回数が1回以下の「低頻度群」(n=1万2902)に分けて分析を行った。

 高頻度群は、低頻度群と比較して4mm以上の歯周ポケットの新規発生までの時間が有意に長いことが確認された。さらにコックス比例ハザードモデルによる解析では高頻度群のハザード比は0.61と推定され、低頻度群と比較して4mm以上の歯周ポケット新規発生リスクが有意に低いことが示された。

 次に、客観的指標「歯周ポケットの深さ」について、2014年時点での歯周ポケット測定値を用いて、歯周ポケット4mm以上群(n=346)と歯周ポケット4mm未満群(n=877)に分けて分析を行った。その結果、歯周ポケット4mm以上群は4mm未満群に対して、8年間の累積歯科医療費が1人当たり約4万円高くなった。

 続いて、2014年と2023年の健康診断データを有する日本IBM健保に加入する事業所の従業員を対象に、「定期的に歯科健診/歯石除去など予防を受けているか」を問診し、「はい」の回数が9回以上の「歯科健診習慣あり群」(n=2060)と、「はい」の回数が1回以下の「歯科健診習慣なし群」(n=2667)に分けて分析を行った。その結果、歯科健診習慣あり群は、なし群と比較して、喫煙習慣保有者の減少が大きく、運動習慣保有者の増加が大きかった。

 順天堂大学大学院 特任教授、本郷・お茶の水キャンパス 統括産業医の福田洋氏は研究結果を受け、「職域ヘルスプロモーションの中でも歯科領域は、その有用性が期待されていても取り組みの実践やエビデンスが少ない状況にある。今回の報告は、職域での予防歯科活動の有用性や、口腔と全身健康の関連を優れた研究デザインにより示したもので、大変価値があるものと思う。学会発表に先んじて、順天堂大学での臨床疫学ゼミで予演会を行い、多くの産業保健職とディスカッションも行っていただいた。今回の知見が働き盛り世代の歯科ヘルスプロモーションに役立てば嬉しい」とコメントしている。

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