コーセー、メークアップとスキンケアの垣根を越える新原料「アポム」を実用化

2013年6月6日 19時29分

 コーセーは、かねてより研究してきた新素材「アモルファスポリプロピレン(APOM:アポム)」の新製品への応用に成功した。

 ポリプロピレンの分子構造を制御した素材で、ツヤや色材の発色、オクルージョン(閉塞)効果、密着性、弾力性など、多様な化粧品に応用可能な効果を新たに見出した。2013年8月に発売予定の「コスメデコルテAQMW」と「エスプリーク」の新製品へ展開する。

 kose20130606_2.jpgポリプロピレン樹脂は、その高い安全性から食品容器などに汎用されているが、融点が高いために通常の化粧品製造工程では加工・処理が難しく、化粧品原料としてはスクラブ剤などに用途が限られていた。

 今回新しく開発した「APOM」は、メタロセン触媒を用いた特殊な手法で合成することにより、超高分子でありながら融点を低く制御。この結果、化粧品への配合が容易になっただけでなく、メークアップにもスキンケアにも応用可能な様々な機能性が明らかになった。

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 この「APOM」を他の一般的な油性成分と比較したところ、肌から水分が逃げるのを防ぐ「オクルージョン(閉塞)効果」「べたつきのなさ」「弾力性のある膜」といった化粧品に有用な特長を見出した(上記グラフ)。

 このオクルージョン効果により、乾燥した肌に「APOM」配合の乳液を塗り続けると、「肌にうるおいをあたえる」「キメが整うことで肌の透明感が向上する」といった高いスキンケア効果があることもわかった(下記写真)。

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 開発当初、「APOM」は、「優れたツヤと発色」「化粧もちのよさ」といったメークアップ化粧品に適した効果を狙って設計された。しかし、研究を続ける中で、「うるおいを与える」「ハリ感」といったスキンケア化粧品に適した効果が次々と見つかり、非常に有用性の高い原料であることがわかった。

 「APOM」を配合したスティック状口紅の1週間連用試験では、唇の水分量が向上し、縦ジワが目立ちにくくなるという効果があった。唇は角層が薄く水分を失いやすい性質があるが、「APOM」配合の口紅が表面に均一な膜を作ることで、潤いを密閉する効果を発揮したと考えられる。加齢とともに、唇も縦ジワが目立ち、ハリがなくなることが知られていることから、肌悩みに対応した口紅の開発にも生かすことができる。

 さらに、「APOM」を配合した化粧下地の使用試験を行ったところ、肌表面を滑らかに整え、うるおいと透明感のある肌へ導く効果があった。べたつきのないさらりとした感触でありながら、水分保持能が高く、内側からのツヤとハリを実感できる新しい下地化粧品に応用が期待できる。

 近年、紫外線防止や保湿効果と素肌をカバーする効果をあわせもつBBクリームが多くのユーザーから支持されるなど、従来のスキンケアとメークアップの垣根を越えた化粧品に注目が集まっている。同社としても、その期待に応えるべく、魅力的な化粧品の創造を目指し、引き続き新素材開発を進めていく。

<同社におけるAPOM の開発経緯>
 「アモルファスポリプロピレン(APOM:アポム、アモルファス=非晶性)」の研究開発は、2005年からスタートした。「APOM」はメタロセン触媒を用いた最新の分子構造制御技術により、超高分子でありながら低融点となるように設計され、高い透明性、密着性がある。「APOM」をスティック状口紅に配合すると、緻密な連続膜の形成から、発色、ツヤ、滑らかな使用感を著しく向上させることを、2008年に国際学会(第25回IFSCC、スペイン・バルセロナ)にて発表した。2009年4月には、同成果を記者発表している。その後、スキンケア効果など新たな知見が得られたことから、実用化を機に今回追加発表した。APOM はAmorphous Polyolefin by Metallocene の省略語。

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