目指すは「へんな会社」――。約1000人の大所帯を束ねる再春館製薬所の西川正明社長は、2014年5月に開催された日本ダイレクトマーケティング学会の基調講演で講師の大役を務めた際、聴衆へ先の主張を高らかに示した。
おそらく、品格や体裁を重んじたい化粧品メーカーの一般的な感覚に添えば、経営トップが公然と発する企業テーマとしては「異色」に分類できる。
ところが、顧客支持率の高さで知られる同社の代表が「へんな」と標榜すると、「へん」の対語といえる常識やセオリーをやんわり否定しているようでもある。あるいは、2004年の社長就任からの10年間で西川氏に備わった自信が絞り出した言葉だったのかもしれない。
目で見る設備・環境という部分から、成長を続ける再春館製薬所の姿を紹介する。
企業精神「1ミリも変わらない」が
人と敷地全体を強固に覆い尽くす
1932年の創業で平成25年度の売上高が287億円だった同社は、2007年に現「再春館ヒルトップ」へ本社移転を行った。
原料の調達と戸別配送を除けば、化粧品の製造・販売の全行程を内省化して好業績をあげている同社の業務現場は従来から業界内外の注目度が高く、長く熱い関心にさらされてきた。
半死半生だった同社の経営を請け負って通販化粧品の代表格に育てあげた西川通子会長に代わり、バトンを受け継いだ西川社長は現在、「お客様が肌に悩んで『なにか必要』と考えた時、一番に思い出してくれる会社になる」という経営目標を掲げているという。
また、年頭所感では決まって「温かみのある仕事がしたい」と社内へ投げ掛け続けてきた同社長は最近、周囲へ「1ミリも変わらない」と念を押す機会が増えているという。
これは言い換えると、西川社長による「原点回帰をしながら前に進んでいく。いま、やっているところ」(広報)という進行形の経営方針に行き着く。
同社の広報は、信念と自嘲をないまぜにして「ありたい姿は『大きな個人商店』。逆にいうと、新鮮さがなく面白くない会社」だと自己分析している。
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この記事は週刊粧業 2014年9月1日号 7ページ 掲載
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