第95回 肌トラブルにあって気が付いた

【週刊粧業2024年4月15日号9面にて掲載】

 私は若いころから「自分は肌が丈夫だ!」と思ってきた。今考えると、肌には極めて良くない生活習慣で過ごしていたし、さらに満足なお手入れもしなかった割に、めったに肌トラブルは起こさなかった気もする。もちろん無頓着なので、少々のトラブルは気にしないという性格も影響している。

 ところが最近少し油断したために、肌トラブルでつらい思いをすることになった。蚊に刺されたような跡があったところに、少し刺激の強いモニター商品を塗ってしまったのだ。その後ヒリヒリしてとても痛かったので、すぐに使用をやめた。その日からアトピー性皮膚炎用に作られたオーガニック化粧品に切り替えて、安心の日々が戻った。

 つらい思いをしたことで、いつも通販化粧品のお客様インタビューで聞いていた敏感肌や乾燥肌の方々の「肌トラブルの悩み」を少しだけ体験することができた。ヒリヒリ感があった日は、とにかく不安でいっぱいになる。「もっと酷くなるのではないか」など、顔を洗うことすら躊躇してしまうほど。安心して使える化粧品を見つけた時は、ほっとした。

 敏感肌や乾燥肌の人が、「酷い肌トラブルで自分に合うものを見つけるのに苦労した。今はこのブランドに出合ってとても安心して使える」と発言していた気持ちがよく理解できた。このような困ったときのブランドとの出合いがきっかけとなり、その後ファンになってくれるのだろう。私のように「なんでも合う」と思っている顧客とは別の感情があったと想像できる。

 ところで、一週間が過ぎて私の肌トラブルはすっかり治ってしまい、いつものように何でも使える肌に戻った。そうすると救急コスメのように使用していた敏感肌用化粧品が少し物足りなくなって、普段使いのコスメだけではなくモニター商品も再開し、その他もろもろ手持ちのアイテムを使い始めた。

 まるで解禁されたかのように、普段より様々なブランドに手を出してしまったような気がする。職業柄、様々な化粧品が身の回りにある状態なのが影響しているかもしれないが……。

 そこで化粧品の使い方について考えてみた。化粧品会社はいつもお客様に、「ご自分の肌に合った商品を、継続して使い続けてください」と訴えている。これは正しい販売方法なのだろうか? という疑問が湧いたのだ。もちろん肌トラブルを起こさないように、自分の肌質や肌悩みに合った化粧品を使っていただくのは基本だ。

 しかし、それでは「いろいろな化粧品を使って楽しみたい」という期待には応えられないのではないか? 私が肌トラブルで、普段は使わない商品を使ってみたり、解禁されたら様々なものを使いたくなったりしたように、自分の気分に合わせて、コスメを選びたくなることもあるのではないか? 例えば、洋服を気分に合わせて選んでいるように、スキンケアも同一ブランドの中で選択肢があれば、もっと楽しくなるのではないか? という考えが、というより期待が膨らんでしまった。

 例えば香りやテクスチャー、剤型、パッケージなどを安心できるお気に入りブランドの中でも選ぶ楽しみがあれば、ワクワクドキドキ、飽きることや退屈さを感じることはない。他ブランドへの浮気防止にもつながる。「気分に合わせて選べる化粧品~洋服のように着替える化粧品」はどうだろうか? たぶんロットもまとまらないだろうからメーカー泣かせの商品になってしまうかもしれないので、単なる私の妄想です。
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鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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