【週刊粧業2024年11月4日号2面にて掲載】
このところ様々な商品の値上げが続き、家計を預かる者にとっては、買い物に行くたびにため息が出そうな日々が続いている。化粧品会社は「既存商品の値上げ」は少なく、「上位商品を出す」会社が多いようだ。新商品は機能がさらにアップして、価格も高くなり、高級化に向かっている。
特に店頭販売のハイクラスブランドは、上位商品の新発売が相次いでいる。国内市場は化粧年齢人口も減っており、なかなか需要が伸びないことに加え、コロナ後は使用アイテムを減らす消費者も多い。客単価をカバーするには、上位商品で価格アップするしか方法がないのかも知れない。
化粧品は日用品の中の消耗品で、高額の宝石やマンションを売る訳ではないため、客単価を上げるとは言っても限界がある。お客様数を増やすことが難しいと考えると、まずは一人ひとりのお客様に使い続けてもらうことが必要になる。次にメインのアイテムだけでなくサイドアイテムも買っていただき、化粧品はすべて自社のブランドを使用してもらう。そうすればお客様の年間累積客単価(LTV)が高くなり、会社は売上をキープすることができる。
それが販売側の喫緊の課題である。ではお客様がその願いに応えてくれるためには、何が必要かと考えると、商品の「付加価値を高める」以外にない。お客様の身の回りを取り巻く商品やサービスの中で、“特別な存在”になれるような「付加価値」を発揮できるようになることである。
そのためには、どんなことが叶えば付加価値が上がるのかを考えてみた。まずは何といっても機能性。シミやたるみ、肌のハリ、ツヤなど、すべての肌悩みが一気に解消して若いころの肌に戻ったとしたら、それは付加価値どころではなく「価値」そのものが上がる。そのためには肌悩みを解消するような有効成分と、その元となる原料が精査されたものであり、効果も信頼できるエビデンスなどがあるものということになる。
2つ目は、お手入れ方法が納得できるものであり、自分の生活習慣に合っていること。優れた化粧品はテクスチャーの心地よさがある。伸びの良さ、香りのよさが、リラックス効果や幸福感をもたらし、豊かな気分になる。この肌触りや感触こそ「付加価値」を高める大きな要因だ。
3つ目は、やはり特別なお手入れ方法が必要だ。スペシャルなメニューを特別にレクチャーしてもらえることや、選ばれたサロンで選ばれたコミュニテイーへの参加を実現させ、じっくりとお手入れ方法を学ぶことも「付加価値」を上げる要因の一つになる。
4つ目は、化粧品の枠を超えるような付加価値だ。自分自身の考え方や生き方にまで影響を与えるような情報や文化の提供、つまり「価値観」の変化を促すようなメッセージ性があれば、もはや単なる化粧品ではない。通販化粧品ならば、店頭販売とは異なって「お届けする」という最後の仕上げが必須となる。それならば特別なお届け方法で「付加価値」を上げる手段もあるはずだ。店頭販売ではできないサプライズなお届け方法があれば、通販化粧品の「付加価値」を上げることもできる。
例えば、箱を開けた時に自分の好きな香りが広がったり、パーソナルなメッセージが入っていたり、些細な心配りがあると商品の価値を押し上げてくれる。つまり業態に関わらず、あるいは業態の特性に応じた「付加価値」の上げ方もある。
単なる「値上げだけではない」お客様に喜ばれる「付加価値を上げる」方法をいろいろ考えてみたいものである。それを続けることで、化粧品販売の常識や範疇に収まらない、新しい化粧品ビジネスが生まれるのではないか。
鯉渕登志子
(株)フォー・レディー代表取締役
1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。
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