ミンテルジャパン、サステナビリティレポートを発刊

粧業日報 2024年10月4日号 4ページ

カンタンに言うと

  • 日本人は環境問題に対して悲観的で無気力、啓蒙活動が急務
  • 消費者意識とは対照的にサステナビリティへの取り組みに熱心な日本企業
  • 消費者に企業のサステナブルな活動を意識してもらうために必要なことは
ミンテルジャパン、サステナビリティレポートを発刊

 ロンドン本社を含め13か国にオフィスを構える市場調査会社「Mintel Group」の日本法人であるミンテルジャパンは、「サステナビリティの世界的展望 2024-25」(著者:リチャード・コープ氏)と題した、日本を含む世界10カ国の消費者1万人を対象にした調査レポートを発刊した。

 レポートでは、ミンテルが独自に行ったサステナビリティに関する消費者の意識調査や外部データなどをもとに、各企業が取り組むべき「サステナビリティ」の取り組みについてインサイトを提供している。

 2024年の調査では、日本人は「気候変動否定論者」の割合が他国よりもはるかに低いことがわかった。「人間の活動が地球温暖化/気候変動に大きな影響を及ぼしているとは思わない」という記述に「同意する」と回答したのはわずか18%で、調査対象10カ国の中では最低、また同記述に「同意しない」と回答したのは43%で、中国に次いで2番目に高い数値だった。


 さらに、日本は2024年の調査対象の10カ国の中では「気候変動/地球温暖化」を関心事のトップ3に挙げた割合が一番高く、57%(2021年:51%)だった。ここ数年、日本列島では台風や異常気象による甚大な被害が続いており、日本人が「気候変動」を身近に捉えていることが伺える。

 しかし、世界では「住んでいる国で起こる異常気象(洪水や熱波など)は、個人的に環境保護活動をするきっかけになる」と回答した人が大多数(58%:2021年比で4P増)であったにもかかわらず、日本では2022年の調査では52%、2024年には47%と低下している。

 また、2021年には世界の55%が地球を救うための活動に関して「今、行動すればまだ間に合う」と信じていたが、2024年には48%にまで減少している。この傾向は日本ではさらに顕著に見られ、今回の調査対象国の中で最も低い35%にとどまっている。なお、日本は2021年の調査でも同じく35%という結果が出ており、元々地球を救うための環境問題への取り組みに悲観的であることが窺える。

 さらに、自らの行動が「環境にポジティブな影響を与える」と回答した割合が日本では、他の調査対象国と比べると2021年で15%、2024年では19%(世界平均は2021年:51%、2024年:47%)と著しく低い結果になっている。

 つまり、日本は世界と比べても多くの消費者が「気候変動/地球温暖化」に高い関心を持ちながらも、その対応に関しては悲観的でサステナブルな行動を起こすことに無気力であることが浮き彫りになった。

 これは、日本ではこういった環境への取り組みが消費者個人個人ではなく、政府や企業などによってなされるべきだと思われているからかもしれない。今後、政府や各企業がサステナブルな取り組みの重要性を消費者に伝え、啓蒙する余地が大いに残されていることを示している。

消費者意識とは対照的に
サステナビリティへの取り組みに熱心な日本企業

 消費者の環境保護活動への意識の低さとは対照的に、日本の企業は「サステナビリティ」という観点において様々な努力を行っていることが、業界別レポートの調査で明らかになっている。日本の消費者は企業が提供している、サステナブル訴求の商品を意識せずに購入し、結果的にサステナブルな行動をとっている可能性もある。

 「エシカル/環境保護」を訴求した新商品の割合は、日本では2019年の17%から2024年には31%まで上昇しているものの、2024年にイギリスは85%、ドイツでは84%に達しており、まだ日本企業に取り組める余地があることを示唆している。一方で世界の他市場ではまだあまり一般的ではない「詰め替え用」の訴求が日本では最も一般的で、2024年に発売された家庭用品の28%が詰め替え用だった。

 リチャード氏は、レポートの中で「日本ではゴミの分別、詰め替え用の購入、レジ袋を買わないといったサステナブルな行動が社会規範として定着しており、平均60~70%の消費者が実施している」と言及している。

 美容・パーソナルケア分野では、新商品の「エシカル/環境保護」訴求が2019年の15%から2024年には43%に上昇しており、他業界と同様に日本企業の意識が高まっていることが窺える。

 また、世界的な気温の上昇により、消費者ニーズに変化が起きていることにも触れている。異常気象の増加により、冷却効果や消臭効果のある商品などへの関心が高まっていることの例として日本製品からは、花王の「ビオレ 冷ハンディミスト サボンの香り」を紹介している。

消費者に企業のサステナブルな活動を
意識してもらうために必要なことは

 リチャード氏は消費者がよりサステナブルな選択を行うために企業が意識して取り組むべきことについて、「わかりやすい情報や指標を活用することが重要だ。消費者の購買決定に影響を与える持続可能性に関するラベルの中で、世界の消費者の30%が選んでいるのは、製品の環境への影響を示す、Nutriscore形式のシンプルな評価基準(1~5段階や赤・黄・緑で色分けなど)だ。このような評価基準は、オーガニックやフェアトレードなどの多様で混乱しがちな情報から、消費者を解放し、単一の指標で判断できる利便性を提供する」と語る。

 特に日本では、企業の行っているサステナブルな取り組みが消費者に意図したようには伝わっていない可能性があるため、メッセージをどのように消費者に伝えていくかは今後も非常に重要になると思われる。
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