コーセー、顧客の気分をリアルタイムに推定する数理モデルを開発

訪販ジャーナル 2024年9月30日号 2ページ

コーセー、顧客の気分をリアルタイムに推定する数理モデルを開発

 コーセーは、関西大学 総合情報学部 瀬島吉裕教授との共同研究により、化粧品のオンラインカウンセリングにおいて顧客の気分を推定する数理モデル(気分推定モデル)を開発した。

 この技術を用いることで、オンラインカウンセリングの音声から顧客の気分の高まりや落ち込みをリアルタイムで察知することができ、これを応用することで、より一人ひとりに寄り添ったカウンセリングサービスの提供が可能になる。

 研究成果の一部は、国内最大級の化粧品技術の発表会である第2回日本化粧品技術者会(SCCJ)学術大会(2024年11月18日~20日、兵庫県)にて発表する。

  近年、「BC(美容部員)に周囲を気にせずに日頃のお手入れや肌の悩みを相談できる」「移動の時間がないときや移動の手間なく利用することができる」といった理由から、自宅にいながら美容や化粧品のカウンセリングを受けられるオンラインカウンセリングサービスが広がっている。同社の調査では、オンラインカウンセリングを受けた人の約9割が美容への興味・関心が増加し、約7割が購入検討や店舗訪問を行い、約3割が商品を購入したという結果も得られている。

 しかし、オンラインでは画面越しのコミュニケーションとなるため、対面よりも顧客の変化を察知する情報に乏しく、顧客に寄り添ったカウンセリングが難しいという課題があった。そこで、研究ではオンラインカウンセリングを受ける顧客の気分を、音声からリアルタイムに推定できる数理モデルの開発に取り組んだ。

 共同研究者である瀬島教授は、これまでにオンラインコミュニケーションでの気分の盛り上がりを推定する数理モデルを開発してきた。しかし、このモデルは対等な2人のコミュニケーションを前提としており、カウンセリングのような役割が異なる2人のコミュニケーションには適用が難しいモデルだった。

 そこで研究では、実際に同社で行っているオンラインカウンセリングの様子を解析することで、このモデルの再設計を行った。このモデルは、顧客とBCの気分や対話の中で生まれる目に見えない場の雰囲気を仮想的な温度空間として表すもので、対話のやり取りが熱の出入りに対応して、それぞれの温度が変化する。

 カウンセリングにおいては、接客を行う側、受ける側というように役割が異なるので、それに合わせた熱の流れになるように工夫することで、オンラインカウンセリングに対応した気分推定モデルを開発した。このモデルを用いることで、カウンセリング中のBCと顧客の音声に関する情報から、顧客の気分を推定することができるという。

 実際の試験では、開発した気分推定モデルを用いて20~40代の男女15名にスキンケアに関するオンラインカウンセリングを体験してもらい、その様子の録画を見ながらそのときの主観的な気分を評価してもらい、その結果とモデルによる気分の推定値の一致度を確認した。

 その結果、開発したモデルによって推定した気分の変動と、本人の主観による気分の変動は高い一致度を示した。このことから、今回の気分推定モデルはオンラインカウンセリングにおける顧客の気分の変動をリアルタイムで捉えられることを確認した。

 今回開発した技術は音声を用いた気分推定モデルであることから、オンラインに限らず、あらゆる接客現場で活用できる可能性が示唆された。今後も、顧客一人ひとりに寄り添った満足度の高い美容提案を実現できるよう先進的な技術の開発を進めていく。

ホーム > 化粧品業界人必読!週刊粧業オンライン > コーセー、顧客の気分をリアルタイムに推定する数理モデルを開発

PDF記事・人気ランキング

最新PDF記事

最新PDF記事をもっと見る

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
株式会社ミンテルジャパン
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop