資生堂DE&Iラボ、真のジェンダー平等に向けて実証結果を公表

粧業日報 2024年10月18日号 3ページ

カンタンに言うと

  • 男女均衡、全社アプローチ、継続的検証の実践がジェンダー平等には効果的
資生堂DE&Iラボ、真のジェンダー平等に向けて実証結果を公表

 多様な人財の活躍と企業成長の関係を研究する資生堂DE&Iラボは、「女性活躍からジェンダー平等へ」をテーマとした実証結果を公表した。

 資生堂は、早くから女性活躍に取り組み、上司や本人の意識改革、働き方改革、雇用慣行の改革など、様々な施策を行ってきた。その結果、現在国内資生堂グループの女性管理職比率は40%を超えている。今回、東京大学の山口慎太郎教授のチームと共同で、そのような組織にスコープをおき、ジェンダー不平等をもたらす要因を統計的因果推論により検証した。

 2024年4月に公表した前編では、成果を発揮する能力にジェンダーの差は見られなかったものの、難易度の高い役割を担う確率は男性の方が高い組織があること、一部の職位(グレード)では男性上司は女性部下よりも男性部下に高い評価をつける傾向があることが明らかになった。

 これらはアンコンシャスバイアス(先入観や思い込みから判断や意思決定に偏りが生じる現象)が原因ではないかと仮説を立て、後編では組織のバイアスに着目した検証を行った。

 バイアスを可視化したところ、女性の方が男女平等意識が高く、同時にアンコンシャスバイアスも高いという結果が得られた。これは、女性は男性に比べてジェンダー平等を強く意識している一方で、内面では「女性らしさ」「男性らしさ」に縛られやすくなっている、板ばさみの現状を表しているといえる。

 また、組織の同質性とバイアスの関係として、女性管理職比率が極端に低いまたは高い組織では、アンコンシャスバイアスが強い傾向が見られた。これは、ジェンダーバランスの偏りが組織のバイアスを強める可能性を示唆しており、組織のリーダーのジェンダーバランスの均衡を図ることが、バイアス軽減につながる重要な一歩であると考えられる。

 さらに、前編での調査結果から想定していた「上司が強いジェンダーバイアスをもつ」という仮説は支持されず、バイアスを特定の層や個人の問題ではなく、組織全体の課題として捉える必要があることがわかった。これらの知見を踏まえ、組織が真のジェンダー平等に向けて前進するためには、「ジェンダーバランスの均衡を図る」「全社的なアプローチ」「継続的な検証」が効果的と考えられる。

 具体的には、「ジェンダーバランスの均衡を図り、組織のリーダーの同質性を解消し、多様な視点を取り入れること」「特定の層だけに向けてではなく、組織全体の課題として捉え、組織の一人ひとりがバイアスに向き合う機会を得ることで、偏った決めつけや当たり前を疑い、異なる考えに気づき受容できる文化を醸成すること」「定期的に組織のバイアスを測定し、結果に基づく対応策を見定めること」が真のジェンダー平等に欠かせない取り組みだという。

 これらのアプローチは、多様性を尊重し、公平な機会を提供し、異なる視点を受け入れるという点で、DE&Iの概念と深く結びついている。組織の文化として定着させることが重要であり、一過性ではなく継続的な取り組みとして常に検証と改善を繰り返す必要がある。すべての従業員が自身の潜在能力を最大限に発揮できると信じられる組織の実現、真のジェンダー平等に向けて、資生堂DE&Iラボは、これからも組織変革につながる調査を続けていく。

 次回は、ダイバーシティが実現した先に必要となる「エクイティ(公平な機会の提供)」と「インクルージョン(異なる視点を受け入れる)」の検証にチャレンジする。

 多様な意見や違いが尊重される組織づくりに必要なインクルーシブ要因を定量化することで、インクルーシブな組織運営を実現するためのヒントを探る。

 その第1弾として、多様なバッググラウンドを持つ人材で構成された組織がイノベーションを実現したプロセスにどのようなインクルージョンがあったのかという社内事例を、11月中旬に「資生堂DE&Iラボサイト」で公開を予定している。

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