「韓国コスメブームは落ち着いたのでは?」という声もありますが、実際には韓国の影響力は増しています。日本輸入化粧品協会によると、2024年上半期の化粧品輸入額は韓国が首位で33.2%増の599億7000万円、フランスが2位で30.0%増の517億3000万円。韓国がフランスを超えたのは2022年で、輸入額は10年前の約6倍となっています。
韓国コスメの凄さは、デザイン、パッケージ、質感、コスパでしょうか? いいえ、もっと大きく差がつけられているのが物語性やメタファーの巧みさです。たとえばその独特の表現で一気にバズった「うさぎ舌リップ」。女性潮流研究所でアンケートを取ったところ、若い人は当然知っていましたが、中年世代は「なにそれ?」「怖い?」「気持ち悪い?」と拒否反応を持つ人も。でも、うさぎの顔を見たら可愛いと思いますし、記憶にくっきり残るわけです。
また、最近のロムアンドの8周年記念のInstagramも斬新でした。ワカメスープや白米、キムチをテーマにしたリップグロスを紹介。本当にワカメスープのような深緑色ですが、韓国の文化である「お祝いのワカメスープ」とリンクして強い印象を残します。そういえば、有名なCICA(シカ)エキスも、虎がツボクサに傷をこすりつけて治療したという伝説を活かし、パッケージや広告に虎を大きく訴求することで神秘性が加速しました。
このように、①メタファーの力、②文化との融合、③物語性の創造で、ごくごく普通の色や成分が特別なものとして私たちの目に映ります。
日本の化粧品業界、短期的なKPIや競合研究による模倣に終始していませんか? 特に近年の日本の企業では、「コロナ禍でリモートワークが進んだこと」「生産性向上を優先した結果、会議の時間が削減されたこと」「チーム全体で創造性を高める仕組みが失われつつあること」に危機感を覚えています。
女性潮流研究所では、チーム全体の想像力を底上げする研修を提供していますが、最近は「こういうことを前から話したかったんです」という切実な声が多くなりました。今の時代、楽しく面白いことを考える創造的な時間がない、それは一見わかりにくいですが、実は大きなリスクです。自由な対話こそが新しいアイデアの源泉であり、日々の生活や文化から着想を得る姿勢が独自の製品開発につながります。
日本には本当に面白いユニークな発想をもつ人が大勢います。その能力が開花する仕組みや環境づくりを考えていきたいです。
廣瀬知砂子
女性潮流研究所 所長 / 商品企画コンサルタント
実践をモットーとする化粧品コンサルタント 現場発想で生み出した独自の商品企画法やトレンド分析法で、大企業から中小企業まで多くのヒット商品を手がけている。
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