資生堂、皮ふの免疫細胞が老化細胞を除去する新メカニズムを解明

粧業日報 2024年10月17日号 5ページ

カンタンに言うと

  • 免疫細胞の一種であるCD4 CTLが老化細胞を選択的に除去
資生堂、皮ふの免疫細胞が老化細胞を除去する新メカニズムを解明

 資生堂とマサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所(CBRC)は、共同研究により新たな皮ふの免疫細胞の機能として、老化した線維芽細胞(老化細胞)を除去することと、そのメカニズムを発見した。

 これまで老化細胞は、年齢とともに蓄積すると考えられていたが、老齢の皮ふにおいても必ずしも老化細胞が多いわけではなく、免疫細胞の一種である「Cytotoxic CD4+ T細胞(以下:CD4 CTL)」が老化細胞の蓄積抑制に強く関わっていることを明らかにした。

 また、CD4 CTLが老化細胞の蓄積を抑えるメカニズムとして、老化細胞内で活性化したヒトサイトメガロウイルス(以下:HCMV)の一部分(抗原)が老化細胞の表面に出現することで、それをCD4 CTLが認識し、老化細胞を選択的に除去していることを世界で初めて発見した。

 資生堂は、「肌自らが持つ力で未来の肌悩みを未然に防ぐ」という考えのもと、30年以上前から肌の免疫機能に関する研究にCBRCとともに取り組み、常に進化を続けている。今後、今回の研究成果から皮ふに備わっている免疫を介して老化細胞の蓄積を抑えるような革新的な価値開発を目指す。

 老化細胞は、加齢とともに体内で徐々に増加し、慢性炎症状態を誘発、継続することで、老化や老化関連疾患を促進していると考えられているが、ヒトのさまざまな臓器における老化細胞の蓄積の状況やそれを抑制するメカニズムはいまだ解明されていないことが多く存在する。そこで同社は、皮ふの健康を保つにはヒトの皮ふにおける老化細胞除去の生理的なメカニズムを探ることが重要であると考え、研究を進めた。

 最初に、ヒトの皮ふ組織において、加齢とともに老化細胞が蓄積されるかどうかを調査した結果、若齢の皮ふと老齢の皮ふを比べると、老化細胞が有意に増加していることがわかった。一方で、老齢の皮ふだけで見てみると、50~70代にかけて、加齢に伴って老化細胞は有意には増加していないことがわかった。このことから、老齢における老化細胞の蓄積は、何らかの要因によって抑えられている可能性が示された。

 次に、老齢の皮ふにおいて老化細胞の蓄積を抑える要因を探ったところ、老齢の皮ふでは、免疫細胞の一種であるCD4 CTLが多いほど老化細胞が少なく、CD4 CTLが老化細胞の蓄積を抑えている可能性が示唆された。そこで、実際にCD4 CTLが老化細胞を除去できるかどうかを調べるため、正常な線維芽細胞(正常細胞)と老化した線維芽細胞(老化細胞)をヒトの皮ふから分離した免疫細胞とともに培養したところ、CD4 CTLによって老化細胞が選択的に除去されることが確認された。

 最後に、CD4 CTLがどのようなメカニズムで老化細胞だけを除去するのかを探った結果、老化細胞内に共生しているHCMVというウイルスの一部分(抗原)が老化細胞の表面に出現し、CD4 CTLがその抗原を目印として認識することで老化細胞を除去していることを発見した。

 今回の研究により、皮ふの免疫細胞の新たな機能として、老化細胞の除去という働きを明らかにした。今後はこれらの知見をもとに、皮ふにおける老化細胞の蓄積を防ぐ免疫細胞に着目し、老化に根本からアプローチする革新的な価値の創出を目指していく。

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