粧業日報 2024年9月10日号 4ページ
カンタンに言うと
コーセーは、東海大学理学部化学科との共同研究により、睡眠状態が悪くなるとニンニク臭の主成分として知られる「ジアリルジスルフィド」の肌からの発生量が増加することを見出した。研究成果の一部は、第37回「におい・かおり環境学会」にて発表した。
睡眠は健全な生活を過ごすうえで欠かせない要素だが、OECD(経済協力開発機構)が2021年に公開した調査によると日本は対象33カ国の中で最も睡眠時間が短く、眠らない国として知られている。
睡眠中は肌の生まれ変わりであるターンオーバーが促進されたり、肌のバリア機能が修復されたりと、美容の面でも睡眠は欠かせない時間だが、睡眠不足になると汗や皮脂の分泌量が増えたり、代謝機能に悪影響があるという報告があることから、肌のにおいに関しても影響を与えるのではないかと考えた。そこで研究では、睡眠と肌からのにおい成分の関係の解明に取り組んだ。
まず、実験参加者として「よく眠れる日と眠れない日がある」と自覚のある20~30代の男女4名を選抜し、実験期間中は禁酒・禁煙等の一定の制限はあるものの、睡眠には制限を設けず普段通りの生活を送ってもらった。
研究においては、よく眠れたかどうかを客観的に判定するために「睡眠状態」を評価することにした。参加者には睡眠時に腕時計型のデバイスを装着してもらい、睡眠時間、入眠のしやすさ、睡眠中に起きてしまった回数などを計測した。また、起床時にアンケートによりよく眠れたかどうかを主観的に評価してもらい、それらの数値から総合的に睡眠状態の良好、不良を判定した。
次に、肌から発生するガス成分(皮膚ガス)を採取するため、起床後30分以内に首筋にカップ型の採取器を自分で装着してもらい、皮膚ガスを捕集した。捕集した成分はガスクロマトグラフィー/質量分析計により、皮膚ガスに含まれる成分の特定、それらの成分の定量を行った。皮膚ガスの捕集は7日間行い、得られた睡眠状態と皮膚ガスの結果からその関係性を解析した。
睡眠状態と皮膚ガス成分の発生量の相関分析により、「ジアリルジスルフィド」に睡眠状態と相関があることがわかった。この成分はニンニク臭の主成分として知られており、睡眠状態が良好なときは50cm離れた場合にほぼ感じない程度の発生量であったのに対し、睡眠状態が不良であったときはにおいを感じられる水準まで発生量が増加した。このことから、睡眠状態と特定の皮膚ガス成分の発生には関係があることが明らかになった。
今回の研究では、睡眠状態が皮膚ガス成分の発生量に影響を与えることが示唆された。そのため、良質な睡眠をとることは、体臭ケア方法の1つとして有効と考えられ、研究成果については今後のデオドラント商品などへ応用を検討していく。また、今後もヘルスケア領域を視野に入れた新たな価値提案を実現すべく、研究活動を推進し、独自性の高い商品やサービスの開発に努めていく。
この記事は粧業日報 2024年9月10日号 4ページ 掲載
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