カンタンに言うと
花王は、シャンプーのベースとなる処方に、水層と油層が交互に重なり合ったラメラ構造を使用することで、これまで困難であった脂質成分の多量配合を可能にした。これにより、髪に脂質成分を補給しながら洗うことができるようになる。
今回の研究成果は、「第2回日本化粧品技術者会学術大会」(2024年11月18~20日・兵庫県)にて発表を予定している。
毛髪は約80~90%がタンパク質、約1~8%が脂質、残りは水分やメラニン色素などで構成されており、その中で脂質は、含有量は少ないものの髪のまとまりやツヤに影響する重要な役割を担っている。毛髪内在脂質は日頃の洗髪などで失われやすい一方、これまでの技術では、水に溶けない脂質成分は分離や泡立ちの阻害を引き起こしやすいため、十分な量をシャンプーに配合することができなかった。
そこで花王は、脂質成分を安定的に今までより多く配合できる新しいシャンプー剤型の技術確立に挑戦した。
これまでのシャンプーでは、界面活性剤が水中でミセルと呼ばれる球状の集合状態を形成しており、その内側にしか脂質成分を抱え込めなかった。そこで花王は、水層と油層が交互に重なり合ったラメラ構造に着目。ラメラ構造では、油層に多量の脂質成分を取り込むことができるため、シャンプーのベース処方に応用できるのではないかと考えた。
一般的に界面活性剤と脂肪酸を組み合わせることによってラメラ構造を作ることが可能だが、シャンプーに応用しようとすると、泡立ち性やすすぎ時のなめらかさが不足することがわかった。そこで、界面活性剤と脂肪酸に加えて、様々な成分の組み合わせを繰り返し検証したところ、脂肪族アルコールを加えることによって、すすぎ時のなめらかさが向上し、脂肪酸グリセリドを加えることによって泡立ち性と仕上がり時のまとまり性が良くなることを見出した。これにより、シャンプーの基本性能を備えつつ、脂質成分も多量に配合することが可能なラメラ構造シャンプー剤型の技術を確立した。
脂質成分を配合したラメラ構造を有するプロトタイプのシャンプーで毛束を30回洗髪し、脂質成分の毛髪への残留量と毛束の外観を調べた結果、洗髪を繰り返すことで、配合した脂質成分の毛髪への残留量が増加すること、毛束が揃い、まとまることを確認した。
今回の研究により、水層と油層が交互に重なり合ったラメラ構造をベース処方に使用することで、水溶性成分と脂質成分の両方を十分量配合可能な新しいシャンプー剤型の技術を確立した。
これにより、毛髪に脂質成分を補給しながら洗うことが可能となり、従来は洗浄が主目的のシャンプーに、髪に対する様々な効果を付与できるようになることが期待される。
この記事は粧業日報 2024年9月5日号 4ページ 掲載
■コーセー、次世代型直営店をハラカドにオープン◎アーバンカフェがコンセプト、随所にバリアフリーを採用■花王、脂質成分を髪に補給するラメラ構造シャンプー剤型技術を確立■伊勢半、「ヘビーローテーション」ポップアップイベントを開催■ライオン、「キレイキレイ」高級ラインから新香調を発売
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