第12回 GSCにおける廃棄戦略(2) Beat Chemical Polution

【週刊粧業2024年9月9日号11面にて掲載】

 グローバル3大課題のひとつである「汚染(Pollution)」。プラスチックによる海洋汚染や、PM2.5などによる大気汚染などあるが、化学物質による汚染も最近では課題のひとつとなっている。2024年初頭より国連が「Beat Chemical Pollution(化学物質汚染に打ち勝つ)」を掲げ始めた。

 有害な化学物質は、空気だけでなく、食品や水まで汚染する。これは土壌も汚染されるからである。日本の汚染処理・下水処理技術は世界的にもレベルが高いが、グローバルでは、半数の排水が未処理のまま、河川や湖沼、海に流れてしまうといわれている。これらの解決のため、都市や各国政府ではこのような化学物質の管理と、改善するための取組強化が急務となっている。正確な情報を提供するといったことも、サステナブル先進国の間では重要になってきている。これもサステナブル情報の開示といえよう。

 ビジネス(産業と消費)の現場で求められるアクションとは何なのか。

❶有害化学物質を含む製品の製造・販売を段階的に廃止し、無毒・無害を問わずすべての製品にラベルを貼付する。

❷製品をできるだけ長く使用し、修理、再販、または再利用のために返品し、寿命が尽きて廃棄するのではなくリサイクルできる製造慣行を採用する。

❸化学物質や廃棄物の漏れを防ぐための工業プロセスを改善する。

❹化学物質管理と企業ポリシーに統合的かつライフサイクル的なアプローチを採用し、持続可能なサプライチェーン管理と廃棄物削減を促進する。

❺人間の健康と環境への悪影響を防ぐ、環境に優しく安全な化学物質や化合物へ移行する。

といったことが、国連でも推奨されている。では化粧品業界における視点ではどうだろうか。

 化粧品の有害ケミカルとは(執筆時点)

 環境を破壊し、生物多様性を阻害する有害ケミカルは、人間にとってすべてが有害ではない。そもそも人体に影響があるようなものは、薬などもそうだが、化粧品として認可されないからだ。ただ一部の人は、それで肌が荒れたり、かゆみが出たりなど様々な皮膚疾患などが現れる。なので、ここでは人間にとって有害という視点ではなく、環境や生物多様性において有害であろうものを挙げていく。

⑴UVケア製品などに含まれる一部のケミカル=使用や廃棄において、サンゴや貝など海洋生物が死亡および変形など(★JSCF公式文書「UVケア製品に関するガイドライン」〈https://sustainable-cosme.org/official-announcement/)を参照)

⑵ヘアカラー剤やパーマ液などケミカル=水質汚染の原因に

⑶植物由来原料の生育に使用される農薬や化学肥料(農業)=土壌や水質汚染の原因に

 そして、グローバルで推奨される取り組みと総合して考えると、以下となる。

◆これらを段階的に減らし、代替原料・製品に移行する。

◆地球環境を破壊する恐れがあることをパッケージなどに明記する/使用や廃棄の仕方についても伝える。(クリーンラベル志向)

◆原料/製品生産時に環境に有害な化学物質を使用せず、排水処理などに留意する。

 企業の方はこれらに留意することはいうまでもなく、一般への指南も忘れてはならない。


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長井美有紀

日本サステナブル化粧品振興機構 代表理事

化粧品業界に長く、早くから「環境×化粧品」を提唱。業界・企業・一般に化粧品の環境・社会課題について解く。サステナブル美容の専門家としても活躍し、主に生物多様性と産業について研究。講演や執筆、大学での講義などで幅広く活躍。

https://sustainable-cosme.org/

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