粧業日報 2024年10月3日号 5ページ
コーセーは、雪肌精「SAVE the BLUE~Ocean Project~」にて、16年目を迎える今年、サンゴの一斉大量産卵の撮影に成功した。この貴重な撮影動画を公開することにより、地球温暖化による気候変動や生態系の異変に対する関心を高め、社会全体で環境保全の大切さを考えるきっかけとなることを目指す。
このプロジェクトでは、対象商品の売上に応じ、沖縄のサンゴ育成や地球の環境保全活動を支援できるというキャンペーン型の社会貢献活動として2009年にスタートし、15年間の活動で累計2万211本のサンゴを植樹してきた。
現在、世界のサンゴ礁の面積は地球表面の0.1%ほどだが、そこには約9万種もの海の生物が暮らしている。しかし、地球温暖化による海面温度上昇や海洋汚染などにより、2100年には地球上の全てのサンゴが死滅している可能性が高いと予想されている。サンゴ礁の消失は、海洋生態系の崩壊、沿岸地域の防波機能の喪失、観光産業や漁業への打撃、気候変動の促進など、深刻な影響をもたらす。
沖縄の海には約415種類のサンゴが存在しているとされ、この数は、世界で最もサンゴの種類が多いとされるインドネシア、フィリピン、パプアニューギニアに囲まれた海域の約450種以上に匹敵する。しかし、沖縄では今年の夏も過去に例を見ない暑さを記録し、高水温によるサンゴの白化現象が深刻化しており、沖縄のサンゴの保護・育成は急務となっている。
サンゴ育成活動は、サンゴ再生事業の第一人者である、有限会社海の種の代表・金城浩二氏とともに取り組んできた。今年は広大な人工のサンゴ礁で、異常海水温の中でも白化することなく生き残った、高温耐性に優れたサンゴ「ミラクルコーラル」が一斉に産卵するタイミングを狙い、「サンゴの森」の撮影を敢行。大規模な産卵と、その卵の高確率な受精を確認し、その様子を収録した。
サンゴは一般的に5月から7月の満月の夜、かつ大潮の日に産卵するといわれているが、気圧やその時期の気象環境にも影響を受けるデリケートな側面を持っており、サンゴの識者でも産卵日を的中させることは不可能に近いとされている。
サンゴの産卵を毎年追跡している「海の種」でも、この予測不能な自然の摂理に合わせた産卵監視活動は非常に難しく、通説が通用しないことを踏まえ、毎晩現場で張り込みを行った。その結果、大規模産卵の様子の撮影だけでなく、産卵の瞬間のマクロ映像の撮影にも成功した。
サンゴは、同じ親やDNAを持つ個体同士では受精しない特性を持つ生物で、自然界では異なる群体が離れて生息していることが多いため、受精率が低いとされている。そのためサンゴの増加はなかなか見込めず、さらに近年の海水温上昇も影響して、サンゴの減少はより加速している。このような状況に対して、「海の種」では、同種であっても異なる親やDNAを持つサンゴを意図的に同じエリアに移植している。
今回そのサンゴが大量産卵をしたため、海で産卵を終えた卵を回収し、受精率の調査を行った。その結果、近距離で親が違う養殖サンゴが一斉に産卵を行うと受精が進み、その受精率は90%を超えることが確認された。天文学的な数の卵が産卵されたが、そのほとんどが受精している状態だった。この結果、サンゴの再生速度を大きく向上させることが期待される。
コーセーの支援のもと、高温耐性に優れた「ミラクルコーラル」による同時産卵が毎年継続されることで、現在「サンゴの森」には新たな世代の「ミラクルコーラル」の小さな群体(サンゴが集まった状態)が生まれている。
沖縄の海でも同様に白化現象は起きているものの、次世代の「ミラクルコーラル」の群体が、高水温を耐え凌ぎ適応していこうとする姿を確認できている。
コーセーは、金城浩二氏とともに次世代の「ミラクルコーラル」を生み出し続けることで、気候変動にも適応して生き続けるサンゴが海の環境を再設計していくという期待感や手応えを感じており、これまで以上にこのサンゴの再生活動に精力的に取り組んでいく。
この記事は粧業日報 2024年10月3日号 5ページ 掲載
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