第8回 化粧品の循環経済(1)

【週刊粧業2024年4月22日号11面にて掲載】 

 サステナブル産業開発において「循環経済(サーキュラーエコノミー)」が主流になり、欧米などでは地産地消を意識した効率の良い産業開発が進んでいる。循環経済というと、近年はプラスチックについていわれることが多くなった。確かに、プラスチック容器をはじめとするプラスチック製品の過剰利用などにより、地球規模で生物多様性などに悪影響を及ぼしているのも事実だ。

 Vol.5でも書いたように、国連がプラスチックのサーキュラーエコノミー達成を2040年までの目標としており、特にプラスチック製品の消費が多い日本では留意しなければならない。循環経済の達成は、プラスチックだけではないが、今回は化粧品産業に関わるパッケージの循環について述べたい。

 飲料などのペットボトルは、サーマルリサイクルといって、回収してリサイクルするとまた同じ飲料などのペットボトルに生まれ変わる。リサイクルの回数限度はあるが、国連の方針に合わせて、バージンプラスチックを生産せずに、リサイクルが推奨される。国連の基本方針は、「Reduce>Reuse>Recycle」であり、どうしてもReduce(削減)・Reuse(再利用)できない場合、Recycle(リサイクル)が推奨される。

 これは、プラスチックに限らず、サーキュラーエコノミーの根本である。つまり、リサイクル前提で製造すること・消費することは望ましくないとされる。Vol.5で書いたように、石油系プラスチックの削減のため、さとうきび由来などバイオマスプラスチックに転換するという施策は化粧品業界でも大変身近になったが、あくまでもそれは石油系原料の削減であり、バイオマスプラ配合100%以外では従来のリサイクル手法のみとなる。

 以前も述べたが、バイオマスプラスチックでも海洋流出すればマイクロプラスチックになりえるし(生物にとって石油原料よりは良いかという点においては未知数)、燃やせばCO2が排出されるように、これらを解決するにはまずプラスチックそのものの使用を削減し、適切なリサイクル方法を消費者に提案すべきである。

 化粧品パッケージや包装では、自宅や店頭での詰め替え推奨や、パッケージレスのため過剰包装を無くすなどの取り組みはすでに行っている企業も多いが、化粧品容器自体のリサイクルはあまり進んでいない。プラスチックや中身の特性上、同じ内容物を入れるしか耐用性がないため、衛生上などの観点でも非常に難しい。

 海外では、もちろん個々の判断で、量り売り等々そもそもスモールアマウントでの購入が可能だが、国内法律ではそれがカバーしきれていない。また、内容物の問題で、通常の化粧品容器は償却が推奨されている。CO2排出抑制や海洋流出抑制のため、企業が消費者に対して適切な処分方法・回収方法などを指南することが求められる。

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長井美有紀

日本サステナブル化粧品振興機構 代表理事

化粧品業界に長く、早くから「環境×化粧品」を提唱。業界・企業・一般に化粧品の環境・社会課題について解く。サステナブル美容の専門家としても活躍し、主に生物多様性と産業について研究。講演や執筆、大学での講義などで幅広く活躍。

https://sustainable-cosme.org/

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