【週刊粧業2024年7月8日号58面にて掲載】
5月にセブン―イレブンから発売された韓国コスメブランド「クリオ」の姉妹ブランド「トゥインクルポップ」は、キラキラグリッターや涙袋ぷっくりアイシャドウなど、全22種類のラインナップで展開されています。
これは、2023年3月にローソンが限定発売した「アンドバイロムアンド」が、3日間で30万個を売り上げる成功を収めたことを受けた動きと見られます。業界でも注目を集めていますが、私自身、若者にとことん絞ったマーケティング手法に興味を持ちました。
まず、プロモーションにおける「#コスメヲタク歓喜」「#メロコス」といったハッシュタグの使用が挑戦的です。特に「メロい」は若者スラングであり、ターゲット層以外には響かない可能性もあります。
また、炎上するような表現ではないのでなかなか気づきにくいですが、「コスメヲタク歓喜」のように、自画自賛するようなハッシュタグの付け方もチャレンジングです。インパクトの強い表現ゆえに、消費者は潜在的にブランドへの熱量がすーっと冷めてしまうこともあり、諸刃の剣のハッシュタグなのです。
見た目もターゲット層である若者に徹底的に切り込むなど攻めの姿勢です。キラキラとしたグリッターや涙袋メイク、トレンドのオレンジを基調としたビジュアルも、コスメに詳しい若者には魅力的に映るでしょう。しかし、中年層には難易度が高いと感じます。近年のコスメ市場では、若者が話題を作り、中年層が購買するというパターンが成功の鍵を握っています。
ケイトの「リップモンスター」は幅広い層に支持された好例ですし、競合である「アンドバイロムアンド」は、可愛らしいパッケージにより、コスメに詳しくない中年層にも手に取ってもらいやすくなり、売上の向上につながったと推察されます。
「トゥインクルポップ」も、韓国コスメ人気が中年層にも広がっている今、若者だけでなく中年層にも訴求できるポテンシャルを秘めています。しかし、デビュー時には、まだ発揮しない戦略のようです。
今回の発売は第一弾であり、さらなるアップデートが期待されます。今後は、若者だけでなく幅広い層に長く愛される商品となるよう、マーケティング戦略は変化していくはずで、どんな展開になるかワクワクします。これはもっとおばさんウケするようにした方が良いという意味ではありません。ターゲット層を広げながらも、ブランドの独自性を維持する、その絶妙なバランスこそが、化粧品マーケティングの醍醐味といえます。
廣瀬知砂子
女性潮流研究所 所長 / 商品企画コンサルタント
実践をモットーとする化粧品コンサルタント 現場発想で生み出した独自の商品企画法やトレンド分析法で、大企業から中小企業まで多くのヒット商品を手がけている。
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