【週刊粧業2024年7月8日号57面にて掲載】
アニマルウェルフェア(=動物福祉)は、ヨーロッパを中心に広がった志向。エシカル・サステナブル分野でも、近年アニマルウェルフェアが基準のひとつに入ってきている。日本を含めたアジアでは、アニマルウェルフェア分野は非常に弱く、食つまり畜産の分野では先進国の中でワーストと言われている。しかし、ここにきて、日本国内でもアニマルウェルフェアについて取り組みが畜産を中心に進んでいる。
農水省が進めている畜産におけるアニマルウェルフェアの取り組みを見るに、ようやく日本でもアニマルウェルフェアが浸透しつつある。化粧品でも動物性原料を使うことがあるが、原料としての調達については別の視点で述べ、今回は化粧品のアニマルウェルフェアについて解く。
そもそも、動物由来を一切摂らない・ペットも飼わないなどストリクトに動物の権利を守る層とは別に、ある程度容認しながら共存を図るのがアニマルウェルフェアとされている。グローバルでは、すでにアニマルウェルフェアに関する規制や法律が施行されており、国際基準では、動物の「5つの自由」を守ることが推奨される。
「5つの自由」とは、①空腹・渇きからの自由、②不快からの自由、③痛み・損傷・疾病からの自由、④正常行動発現の自由、⑤恐怖・苦悩からの自由である。農水省の取り組みでも、この「5つの自由」が畜産業において進み、議論されている。化粧品とアニマルウェルフェアは、もともとすでにそのような思想があったヨーロッパに起源がある。
これら動物の「5つの自由」を保持するために、家畜同様、安全性検査などに用いられる動物実験に対して、良く思わない風潮が生まれた。日本に入ってきているヨーロッパなど海外発のブランドには、すでに「動物実験をしない」ことを認証やブランド説明等でアピールしている。
5つの自由でいえば、③痛み・損傷・疾病からの自由や⑤恐怖・苦悩からの自由に当たると思われる。しかし、ある程度の安全性を保つために必要な検査をして、安全に提供するという持続可能な産業も守らなければならない。
「動物実験をしない」というもので「クリエルティーフリー」というのがある。クリエルティーフリー認証例は、Cruelty Free Internationalのリーピングバニー、PeTA認証マーク、IHTK認証マークなどがあり、既に海外のブランドにはすで付与されているものもある。
アニマルウェルフェアを推進するために、動物実験していない製品を選ぶことのほかに、動物由来原料から植物由来原料に移行/転換することも方法のひとつだが、植物由来だからといって、環境負荷を考えない過剰採集しないことや廃棄物汚染対策などをしっかり行い、トレードオフにならないようにしなければならない。
長井美有紀
日本サステナブル化粧品振興機構 代表理事
化粧品業界に長く、早くから「環境×化粧品」を提唱。業界・企業・一般に化粧品の環境・社会課題について解く。サステナブル美容の専門家としても活躍し、主に生物多様性と産業について研究。講演や執筆、大学での講義などで幅広く活躍。
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