コーセー、iPS細胞の皮膚科学研究への応用に着手

週刊粧業 2014年11月10日号 4ページ

コーセー、iPS細胞の皮膚科学研究への応用に着手
 コーセーは、元京都大学iPS細胞研究所 特任教授で現コーセー研究顧問の加治和彦氏とともに、同一供与者から異なる年齢で得られた皮膚線維芽細胞よりiPS細胞を作製し、解析・評価した。その結果、老化過程の痕跡である短縮した「テロメア」が供与年齢に関わらず回復していることを明らかにした。

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、様々な組織や臓器の細胞に分化し、ほぼ無限に増殖する万能性をもった幹細胞で、ヒトの皮膚などの体細胞に遺伝子などの特定因子を導入し、培養することにより、分化した細胞から未分化の多能性幹細胞に初期化することができる。

 一方、老化の過程は不可逆的であり、老化は細胞レベルでも進行することが知られていることから、同社では、老化した細胞が初期化されたとき、どの程度回復されるかという点に着目した。

 老化の指標として知られる細胞の染色体の両端にある「テロメア」は、細胞分裂を繰り返すとともに短くなり、ある限界を超えて短くなると細胞分裂が止まってしまう。今回の研究では、細胞の初期化によって、老化した細胞の「テロメア」が回復可能かを調べた。

 同研究で用いたiPS細胞は、同一供与者より異なる年齢(36~67歳)で得られた線維芽細胞から、京都大学iPS細胞研究所と加治研究顧問が共同で作製したもの。

 「テロメア」の長さを比較するため、iPS細胞とそれらの元となる線維芽細胞を用いて評価を行った。その結果、36歳から67歳までの間に線維芽細胞の「テロメア」の長さは次第に短縮するが、初期化されたiPS細胞の「テロメア」は、いずれの供与年齢においても、長さが回復していることが明らかとなった。

 さらに、36歳から67歳までに得られた、すべての線維芽細胞から作製したiPS細胞をケラチノサイトに分化させることに成功した。

 このことから、異なる細胞に分化するというiPS細胞の特性は、細胞の供与年齢に関わらず、正常に機能することが確認された。つまり細胞に刻まれた老化の痕跡は、初期化の過程で取り除かれ、iPS細胞の機能にも影響を及ぼさない可能性が示唆された。

 今後の展望としては、iPS細胞化と供与者の加齢について、遺伝子レベルでの知見を蓄積することで、老化過程の再現やメカニズムの解明が進むことが期待される。

 また、iPS細胞やそれを分化させた細胞を用いることで、老化研究の領域だけでなく、皮膚の生理機能解析や化粧品成分の評価系の確立、動物実験代替法への応用などに広げることが可能となってくる。

 同社では、次世代の化粧品の開発へと応用していくため、iPS細胞について、より深化した研究を進めていく方針だ。

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