花王メイクアップ研究所は、日本人女性における口もと形状の加齢変化について検討し、年齢を重ねるに従い、日常的に唇とよんでいる赤唇部が薄くなるだけでなく、鼻の下から唇にかけての皮膚部(白唇部)が長く、丸みを帯びてくることを定量的に確認した。
唇の主な悩みは「乾燥・皮むけ」で、これまで唇の角層機能や皮膚との違いなどの研究が盛んに行われている一方、この「乾燥・皮むけ」悩みは30代をピークに減少し、年代とともに唇の色がくすんで見えたり、ふっくら感がなくなり、輪郭がぼやけるなど形状に関する悩みが増える傾向にあるという。
同社は、これまでの研究で、口もと(唇とその周辺)の見え方の変化が顔全体の見た目印象にも影響を与えることを確認しているが、日本人女性における口もとの形状変化を定量的にとらえた報告はほとんどなかった。
そこで今回は、口もとの形状に焦点を当て、唇(赤唇部)とその周辺の皮膚部(白唇部)の加齢変化を定量的に解析した。さらに、それが個人差でないことを証明するため、同一人物の経年変化についても検討を行った。日本人女性の口もと形状の年代間比較を行うため、16~78歳の日本人女性139名の顔を正面・側面から撮影し、写真画像から唇とその周辺の皮膚部それぞれの部位を計測した。
その結果、上唇の縦幅、下唇の縦幅、唇全体の縦幅はいずれも加齢とともに狭くなっていた。一方、唇の横幅に関しては加齢とともに横に広がること、下唇については、側面からの膨らみが有意に減少することを確認した。
白唇部(鼻の下)については、加齢とともに長くなることが明らかとなった。さらに、側面の画像の検討から、白唇部のそり幅と年齢の間にも正の相関がみられ、若齢者では白唇部が反り返っている人が多いものの、加齢とともに白唇部は丸みを帯びていくことが明らかとなった。
年代を詳細に確認すると、このような変化は40代ごろからみられることから、加齢による内部組織の変化、筋肉下垂等の影響が考えられるという。
同一人物による口もと形状の経年変化を把握するため、2015年時点で46~55歳の日本人女性13名を対象に、正面から撮影した1992年、2002年、2015年の顔画像の各部位を計測し、各被験者の唇の縦幅と横幅の比率、唇の縦幅を1としたときの白唇部の長さの比率を比較した。
その結果、同一被験者の比較においても、唇が横長に、鼻下が長くなることが確認された。
今回の検討で、経験的には知られていながら定量的データの少なかった日本人女性の加齢による口もとの変化が、唇だけでなく、その周囲の形状も含めて明らかとなった。
今後、この知見を化粧品開発やメーク方法の提案に生かしていく。