最終回(第2回) 消費者意識から見るカウンセリング売り場に必要な変革

【C&T2018年1月号10面にて掲載】

はじめに

 第1回(C&T2017年4月号P.39掲載)では、総合マーケティング支援をおこなう株式会社ネオマーケティングと、マーケティングサイエンスをベースにした市場調査をおこなう株式会社コレクシアが共同で化粧品売り場の選定に関する調査を行った。

 そこでは、カウンセリング売り場とセルフ型売り場でのそれぞれの購入者に対し調査を実施し、セルフ型売り場の購入者を4つのタイプに分類した。

 今回は前回調査の続きとして、4つのタイプそれぞれの割合を把握するための追加調査を行った。

 両調査の結果をもとに、カウンセリング売り場は今後どのように変革すべきなのか、さらに深堀りしていきたい。追加調査の概要は以下の通りである。

調査方法:Webアンケート方式で実施
調査の対象:全国を対象とした直近2カ月以内にセルフ型売り場でベースメイクを購入した20~60代の女性
有効回答数:1000名
調査実施日:2017年9月13日(水)

セルフ型売り場購入者4タイプ分類の割合

 前回調査では、セルフ型売り場の購入者を「カウンセリングはなんか怖いからセルフ型派」「今回はセルフ型で十分派」「仕方なくセルフ型派」「自分で選びたいからセルフ型派」の4タイプに分類した。

 それではこの4タイプの中で最も多い割合を占めているのは、どのタイプであろうか。追加調査の結果、「自分で選びたいからセルフ型派」が54.4%の割合でトップとなった。(図1


(図1 セルフ型売り場購入者タイプ分類)

 次いで「今回はセルフ型で十分派」が31.3%、「カウンセリングはなんか怖いからセルフ型派」が9.3%、「仕方なくセルフ型派」が2.2%、その他が2.8%という結果となった。

 また、20~60代の各年代別で見た時もそれぞれのタイプは同程度の割合となっている。(図2


(図2 年代別に見るセルフ型売り場購入者タイプ分類)

 以降では最も割合の多かった「自分で選びたいからセルフ型派」にフォーカスし、特徴と傾向を分析していく。

「自分で選びたいからセルフ型派」のユーザー像

 4タイプの分類の中でもトップの割合を占める「自分で選びたいからセルフ型派」について、ユーザー像をさらに深堀りした。

 美容部員がいるカウンセリング型の化粧品売り場の印象を選択式で聞いたところ、他3タイプの回答トップ3内には「高級感がある」「安心できる」など、カウンセリング型売り場に対してポジティブな回答が入っている。

 しかし、「自分で選びたいからセルフ型派」タイプだけは「疲れる」「押しつけがましい」「圧迫感がある」というネガティブな回答がトップ3を占めており、カウンセリング型売り場に対する強い拒否反応を表す結果となった。

 そして次に美容部員不在のセルフ型の化粧品売り場の印象も同じく選択式で聞いてみた。ここでは4タイプ全てに「手軽に商品を選択できる」「素早く購入できる」というセルフ型売り場購入者ならではの回答が並んだが、「自分で選びたいからセルフ型派」のみ「解放感がある」という回答が2位に入った。

 「自分で選びたいからセルフ型派」にとっては、販売員不在が自由度の向上に繋がることを物語っていると思われる。

 上記より、「自分で選びたいからセルフ型派」は文字通り第三者の押しつけがなく自由に選択でき、自身が購入したいと思ったものを購入するという自由が満たされる場所を求めていることが検証できた。そしてその欲求を満たせる場所こそ「セルフ型売り場」であると判断しているのであろう。

 「自分で選びたいからセルフ型派」をカウンセリング売り場へ誘引するには、カウンセリング型売り場=「息苦しさ」「選択肢の限定」「第三者の押しつけ」という印象を打開することが最重要課題である。

 これまでの調査結果をもとに、現代におけるカウンセリング売り場のあるべき姿について考えてみたい。今回の追加調査でも明確になった通り、現行のカウンセリング型売り場に対しては「息苦しさ」「選択肢の限定」「第三者の押しつけ」というような拒否反応が非常に強く感じられるため、根本的な業態変化が求められているようだ。

 そのため、イオンのコスメーム、三越伊勢丹HDのイセタンミラーなどに代表される国内・海外ブランドを問わず多数のブランドを品揃えする「ブランド横断型」の売り場にするということが、これから必須要素になってくるだろう。

 選択肢(競合)が増える=自社製品購入機会の減少リスクではなく、選択肢(競合)が増える=自社製品接触人数の増加チャンスととらえることで、新規顧客の取り込みも大いに期待できるだろう。またそうすることで、なによりも消費者の「選択欲」を満たすことが重要である。

 「ブランド横断型」に付随して、販売員もブランド専任ではなくなることで、「1つの選択肢を押し付けてくる人」から「多数の選択肢からベストなものを選んでくれる人」へイメージチェンジでき、販売員に対する消費者の拒否反応も軽減されるであろう。これは先にも述べた「第三者の押しつけ」というイメージを払拭することにもつながる。

 また接客方法についても消費者自身に選択させることが重要である。カウンセリングすることだけを目的にするのではなく、自身のみで選びたいタイミング、カウンセリングしてほしいタイミングを棲み分けし、両方に対応できる環境を整えることで消費者自身が全てを選択しているという感覚を持って買い物ができる売り場づくりを目指すべきである。

 近年、ドラッグストアではすでにカウンセリング型売り場を併設し、消費者自身が選択できるようにしていく動きも見られている。

 カウンセリング型売り場が根本的な業態変化を遂げなければ、現在よりもさらに顧客流失は進んでいくことが予想される。

おわりに

 前回の続きとして、カウンセリング型売り場の改善にフォーカスして分析を進めてきた。調査結果からはカウンセリング型売り場の持つ特徴やこれまでメリットだと思われてきたことが現代の消費者ニーズと乖離しているという事が見えてきた。

 近年はECチャネルの台頭もあり、今後とも小売りの苦戦が予想される中、カウンセリング型売り場には一部の改善ではなく根本的な業態変化や新たなベネフィットが求められている。

 各社は消費者の選択欲を如何に邪魔せず、かつブランドの魅力を効果的に伝えていくという難しいアプローチに取り組み続けていかなければならない。

参考文献
■「アイリサーチ」
■「消費者行動図鑑 手段的志向型」
■「カスタマージャーニー NAVI」
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野澤 太郎

(株)ネオマーケティング ビューティ&ライフチーム マネージャー

2000年設立の総合マーケティング支援会社。 設立当初より、マーケティングリサーチ事業を展開し、定量/定性等、あらゆる手法を用い様々な業界に向けてソリューションを展開。 「ビューティ&ライフチーム」は同社内に新設されたコスメやスキンケア、ヘアケア、フェイス&ボディケア等の美容関連の製品/サービス向けに特化した専門チーム。 上記領域におけるマーケティングソリューションを集約し、より顧客視点でのサービス開発を行っている。

https://www.i-research.jp/beauty-and-life/

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