【週刊粧業2018年08月27日号4面にて掲載】
「平成」も残すところ半年ほどとなりましたが、振り返ると地震や津波、台風、豪雨など自然災害が非常に多かったように感じます。
さて、そんな時代のなかで近年(再)注目を浴びているのが「ドライシャンプー」です。ドライシャンプーとは、水や湯を使わず、洗い流す必要のないシャンプーを指します。
その歴史は古く、大正末の「髪洗い粉」に遡ることができます。当時は髪を洗うという行為自体がまだ新しかったそうですが、メイ・ウシヤマ著『近代美しき粧ひ』(昭和3年)には、脂気の多い髪や頭皮に用いるものとしてドライシャンプーが紹介されており、言葉としてはすでに一定の認知を得ていたことがうかがえます。
その後、液状のシャンプーの登場・普及により、ドライシャンプーは次第に医療現場や介護施設などの限られた場でしか使われなくなりました。
しかし、平成に入って大規模な自然災害が相次ぐなか、水が十分に使えない被災地への支援物資としてメディアに取り上げられ、広く認知されるようになりました。
今年7月に西日本を中心に襲った集中豪雨の際にも、資生堂は5000個、コーセーは3800個のドライシャンプーを提供したことが報じられています。
■「衛生」から「美容」へ
ドライシャンプーはこのように「衛生」「防災」アイテムとして定着してきましたが、近年は「毎日のシャンプーは、(界面活性剤や摩擦などにより)髪や頭皮に良くない」「ドライシャンプーは髪や頭皮を傷めることなく、リフレッシュできる」という理由でも注目され始めています。
つまり、ドライシャンプーに対する関心は、スカルプケアやオーガニック・ナチュラルコスメへの関心の高まりと相俟って、「衛生」から「美容」へと広がりをみせています。
なかでも人気となっているのがコーセーの「スティーブンノル」で、20代後半以降の美容意識の高い女性をターゲットに、おしゃれなパッケージのドライシャンプーを展開し支持されています。
さらに今年6月には、TV番組『情熱大陸』でモデルの中村アンがドライシャンプー(海外ブランド)を使用するシーンが映し出され、ドライシャンプーに対する関心がいっそう高まっています。
そして、もうひとつ興味深いのが、資生堂が今年8月に「ツバキ」より発売したドライシャンプーです。
そのコンセプトはずばり、「部屋シャン」(お風呂からシャンプーを持ち出すという新習慣)。同商品はこれまでの美容意識の高い女性をターゲットにしたアイテムとは一線を画し、美容に興味を持ちながらも「ズボラ」「サボリ」「頑張らない」という現代女性のインサイトをとらえています。
このように、ドライシャンプーは平成という時代のなかで緩やかに広がり、変容を遂げてきています。
今後はさらに男性の需要も獲得できるのか、注目されます。