第55回 スモールマーケットに化粧品の未来がある

【週刊粧業2020年4月06日号11面にて掲載】

 通常多くの化粧品ブランドは立ち上げの際、ターゲットやコンセプトを設定する。「買っていただくお客様とニーズへの対応」を決めるのは当たり前のことだ。しかし、ターゲットを「絞る」となると少し二の足を踏む。

 「多くのお客様のニーズがあるのに、わざわざ絞り込んで狭くする必要があるのか?」「こちらで限定してしまうのは不利ではないか?」そんな意見も少なくない。

 とはいえ、中堅企業が大手企業と同じコモディティ型のマーケットで競うのは無理なことである。

 そこで、コモディティ型とは真逆のスモールマーケットに注目してみたい。

 目的や悩みに徹底的に寄り添うブランド作ってみてはどうか? 市場規模が小さなニーズに応えることで、大きなマーケットには真似のできないきめ細かいサービスなどが可能になり、お客様と深い絆を築くことができる。商品を気に入ってもらえば圧倒的なファン化にも繋がりやすい。

 スモールマーケットは、小さなニーズを丁寧に拾い上げて、追いかけていくことがポイントとなる。ではターゲットやニーズを「絞る」とはどういうことか?

 例えば、「ママ」にフォーカスしたブランドだったら、さらに細分化して「乳幼児のママ」とする。同じママでも「小学生のママ」と「乳幼児のママ」ではライフスタイルや生活上のニーズも大きく変わってくるはずだ。

 さらに、「乳児を子育て中のママが喜ぶサービスの展開も可能」になる。それがママ会を通じて、同じような生活環境にある女性に支持される可能性もある。

 また、年代やライフステージに限らず、悩み別、パーツ別、ライフスタイル志向別など小さなマーケットを細分化することは可能だ。

 爪やまつ毛といった「パーツ」の部位に特化したり、「悩み」でもデリケートゾーンや、好きな香りとニオイケアに特化したりすることで、専用性を高めることができる。

 悩みや気になることが共通する人たちの声を集めて、それに応えようとすることで企業はさらに専門性を高めることができる。そんな「こだわりの姿勢」を貫ければ、専門メーカーとして絶大な信頼を得ることもできる。

 最近は、化粧品も小ロットからの生産が可能になってきている。そのためスモールマーケットのモノづくりは、昔よりはハードルが下がっていると思う。

 もちろん、課題もある。エッジの効いたブランド作りに成功しても、ある程度の数量を販売しないと収益バランスが悪くなる。それを解消するためには、限定されたファンだけでも圧倒的なリピートユーザーを育てることだ。さらにファンクラブやコミュニティー化を進めれば、ある程度の販売ボリュームが見込めると思う。

 徹底したこだわりをもつ開発の人材が、何から何までこだわり、想いを貫いてモノづくりも販売もやるようなことに挑戦しないと、イノベーションは起こらない。

 誰が使っても良い化粧品を作り、売る時代は終わりつつある。スモールビジネスの中に新たな化粧品マーケットの兆しがあるのではないだろうか。
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鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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