【週刊粧業2020年5月25日11面にて掲載】
予断を許さない状況ながら、世界に先んじて「Afterコロナ」へと移行しつつある中国。その経済、消費の回復に期待を寄せる日系化粧品ブランドも多い。今回はこうした日系ブランドの前に立ちふさがるであろう中国国産ブランドのコロナ情勢下の動きをデータから見ていこう。
5月15日、中国国家統計局は2020年4月の社会消費品小売総額を発表した。
それによると、4月分は約2兆8000億元で前年比7.5%の減少となった。新型コロナ情勢下である1~2月分は前年比20.5%の減少、3月も15.8%減少と、消費の落ち込みが続いていた。
4月は外出規制が徐々に解除された時期であったが、やはり昨年レベルの回復とはならなかった。
悲観的になるメーカーも多いようだが、化粧品というセグメントでは、朗報もある。
同統計の「化粧品類」は224億元で、昨年同月比3.5%増だった(1~2月は14.1%減、3月は11.6%減)。少なくとも、4月の化粧品消費に関しては昨年並みに戻ってきているといえる。
日本の化粧品としては、ここで自粛ムードから一転、攻勢に転じたいところである。
そこで注意が必要なのが、徐々に力をつけている中国国産ブランドである。日本でも注目され始めている「完美日記(Perfect Diary)」をはじめ、有名メイクアップアーティストによる「毛戈平」など、主にメークブランドが攻勢を強め、若い世代を中心にシェアを伸ばしている。
トレンドExpressでは今回、「完美日記」の2月、3月の情報発信状況を調査した。Weibo、WeChat公式アカウント、ニュースサイト、BBSの4種類の露出件数を前年同時期と比較してみた。
情報発信数は、Weiboが19年の約2.3倍、WeChat公式アカウントが約4.8倍、ニュースサイト、BBSはそれぞれ約4.8倍、約6.8倍と大きく増やしている。またその割合を注意深く見てみると、Weiboの割合が約10%程度減り、WeChat公式アカウントの発信割合が増加している。
同ブランドは19年からWeChat公式アカウントのフォロワーやブランドが運営するWeChatグループのメンバーとのコミュニケーションを活性化させ、WeChatのミニプログラム店舗での消費を誘発させるというマーケティング手法で、成長のスピードを速めている。
「完美日記」のマーケティングは以前から業界でも注目されているが、コロナ情勢下でもマーケティングを推進し続けていたようだ。
また、注目すべきはその内容である。自社ブランド商品の紹介情報、KOLによる発信も行っているが、「自宅でできるマスクメイクレッスン」といった巣ごもり生活を楽しめるコンテンツや「最前線で戦う医師への祝福」といった公益的メッセージを送っている。
さらには「特定のキーワードで自分のストーリーを作って共有する」というフォロワーを巻き込んだコミュニケーションを取るなど、非常時に寄り添いつつ、ブランドへのエンゲージメントを高めるための情報発信を強化していることがわかる。
3月8日の国際婦人デーにはEC商戦「女王節」があったが、同ブランドは人気商品「アニマルアイシャドー」40万個を1日で完売するといった成果を上げており、6月に控える上半期最大のEC商戦「618」でも、台風の目になることが予想されている。
コロナ後の市場を狙うためにも、こうした中国国産ブランドの動きの把握は必須といえるだろう。