【週刊粧業2020年7月27日14面にて掲載】
例年とは異なる雰囲気の中で展開された今年の「618」。上半期最大の小売イベントが終了したわけだが、その経過を見ていると、中国EC業界が新しい時代に入っているのではないか……という疑問がわいてくる結果となった。今回はその様子をクチコミ調査の結果をもとに見ていこう。
今年の618の成果をメディア報道や公式発表などを基に整理を試みた。
京東では2020年の618累計オーダー金額を「約2692億元」と発表し、昨年(2015億元)を大きく上回った。
対する天猫は「6982億元」と発表。2社を合わせると1兆元近い金額となり、昨年を大きく上回る規模に発展したと考えられる。
ECデータの分析を専門とする「星図数据」では、今年の618期間中(6月1日~18日)のGMVを発表している(レポートは未公開ながら複数のメディアが報道)。
それによると618イベントを展開した全ECサイトの合計オーダー金額は「4573.3億元」で、19年の3180.75億元より43.78%増だった。コスメ部門では、天猫、京東ともに「LOREAL」「LANCOME」が1位、2位とほぼ欧米系がトップを占めた。
トレンドExpressでは、そんな今年の618をどのように消費者がとらえていたかを把握するため、5月25日から6月20日の618期間中、Weibo上でつぶやかれた関連キーワードでのクチコミ調査を行った。
関連クチコミ総数を見ると、昨年が約30万件であったが、今年は50万件を超え、昨年比で70%近い伸びを見せた。ここには新型コロナ禍における「報復消費」ともいえる心理が現れていたのではと考えられる。
同じく618期間中にクチコミをされたブランド名を集計した(表参照)。ここでもやはり、「LOREAL」「ESTEELAUDER」の欧米系スキンケアブランドの強さが際立つ。
一方で、19年と20年のトップ10を比べると中国ブランドの存在感が増している。10ブランドのクチコミを国別に集計してみると、より顕著に見える。
昨年は10ブランドのクチコミの74%を欧米系ブランドが占めていたが、今年は中国系に巻き返されている。日本ブランドは残念ながらトップ10から外れたが、資生堂が27位から12位に大きく順位を上げるなど健闘しているといえる。
そのほか、注目したいのは、618期間中にSNS上に頻出したキーワードだ。「優恵(サービス)」や「活動(イベント)」という値引きを現すワードに次ぐ形で「直播」、すなわち「ライブ」が4位にランクインしている。
これは19年には見られなかった新しい現象であり、ライブコマースが爆発的に拡大したことを示している。
そのなかで異彩を放っているが「抖音」と「快手」の2大ショートムービーアプリだ。欧米系および中国系メークブランドが積極的に活用し、売上につなげていた。
これによってこれまでの「淘宝ライブ→T₋Mall店舗」という導線だけではなく、ECサイト外に存在している多様なライブプラットフォームを活用し、それぞれからどのように消費者を抱え込み、また、そうした発信情報とECサイトにおけるキャンペーンをどのように紐づけ、よりお得な印象を消費者に植え付けていくかという、ECサイト内だけにとどまらない広範囲な戦略策定が必要となる。
また、こうしたECサイトとライブプラットフォームには「相性」がある。いわゆる業務提携関係で、しかも年々変化している。
企業のマーケティング担当者はこれまで以上に広い視野に立ってのプランを考えなければならない。