【週刊粧業2022年6月6日11面にて掲載】
「中国の女性は、がっちりメイク」という認識が、2022年に入り覆されようとしている。今、中国を席巻しているのは「素顔美人」。「素顔でより輝く」というテーマのトレンドを探った。
「チャイボーグメイク」といったキーワードで中国のメーク手法や中国国産メークブランドが日本で紹介され始めたのは2019年頃だっただろうか。そのころの「チャイボーグメイク」といえば、全体的に色が「濃い」、はっきりとしたメイクを指していたと記憶している。
しかし、移ろいの早い中国ではそのトレンドは若干「過去のもの」となりつつある。
最近、中国の若い女性を中心にはやり始めたのが「白開水メイク」。「白開水」とは、日本語で言う「さ湯」のこと。つまり「さ湯のように透明で、あっさりとしたメイク」という意味である。
特徴としては、透明度のある白い肌(ファンデーション)にナチュラルな眉毛。やや淡いイメージのアイメーク、場合によっては目の周りも薄ピンクのアイシャドーなどで淡く彩る姿も見られる。
口紅の色も真っ赤ではなく、ぼかした薄いピンクが好まれているようだ。より「ナチュラル感」を求めたメークで、「チャイボーグメイク」とは対を成すものといっていいだろう。
火が付いたのは、中国の若手女優として人気の鞠婧褘(ジュ・ジンイー)のメークが、あまりに可憐でかわいらしいと話題になったことだ。すでに中国版Instagramである小紅書(RED)には1万を超える「白開水メイク」のノウハウなどのノートが投稿されるなど注目が集まっているようである。
トレンドExpressでは、「白開水メイク」の状況を知るべく、ウェイボー上のクチコミ簡易分析を行った。
21年5月から11月までの月間クチコミ件数は300件程度だった。12月に一気に1200件を超え、一旦400件程度に落ち着いたが、22年3月に再び2000件まで急上昇した。
こうしたクチコミ件数が階段状に増減することは、中国の新興トレンドが定着していく際によく見られる傾向だ。
クチコミから見る需要度合いも、ポジティブなクチコミが23.59%と比較的多く、ネガティブクチコミはわずか1%程度。流行とは賛否両論あるのが普通だが、このメイクはかなり好意的な受け取られ方をしているようである。
クチコミ内容を見ると、どうしても本物の「さ湯」と関連したワードの「キッチン」や「トレーニング(水分補給)」などが出てくるが、「視頻(動画)」というワードがそれらを上回っている。メークノウハウ動画を見ながら「白開水メイク」にいそしんでいる姿が想像できる。
クチコミには、そのメイクの代表格である女優「鞠婧褘(ジュ・ジンイー)」「劉亦菲(リウ・イーフェイ)」の名前も登場している。
また「鏡面」は、このメークのポイントである輝きのある透明度を鏡に見立てたワードである。同時に「カラー」や「トーン」など、可憐に見せるための色調にもこだわっている様子が垣間見える。
そうしたブームに押されてか「素顔粧(素顔メイク)」というキーワードも、22年に入り増加傾向にある。
直近12カ月間で2万件を超える投稿があるが、22年1月~2月頃の急上昇が大きい。クチコミのポジティブ率も25%を超えている。現在の中国メークトレンドは「素顔メイク」といえそうだ。
くっきり、はっきりの「チャイボーグメイク」から、真逆の「素顔メイク」へ。このトレンド変化の背景には、現代中国の若者、すなわちZ世代が非常に流行に敏感であり、自分に合うものであればすぐに取り入れるというアクティブさがある。
同時に、この世代は「自分を装わず、自分自身で勝負」という意識が強いのも特徴で、「素顔メイク」が受け入れられる下地になっているようにも感じられる。
22年の中国は素顔美人の年となりそうだ。