【週刊粧業2022年7月25日4面にて掲載】
2022年上半期の大型商戦「618」は、例年よりも静かに進められた。その中で新たに台頭したスキンケアブランドがある。今回は今注目の中国ブランドを調査した。
22年の618商戦で、天猫におけるスキンケアブランドでは「L’OREAL」「Estee Lauder」「LANCOME」といった大手欧米ブランドが盤石の状態だった。日本勢からは資生堂も安定の売上トップ10入りを果たした。
注目は中国ブランドの動きである。
中国で敏感肌用のスキンケアブランドとして高い知名度をもつ「WINONA(微諾娜)」はすでにトップ10の常連になっているが、そのWINONAだけでなく、資生堂やLA MERを押さえて5位に入ったのが「PROYA(珀莱雅)」というブランドである。
PROYAは2003年、浙江省杭州市を拠点として生まれた中国ローカルブランドで、深海の成分研究をベースに生み出された商品というのが特徴である。
人気商品は「紅宝石精華」と呼ばれるエッセンシャルオイルで、特に小じわを目立たなくするなどのアンチエイジング効果が高いとされる。
価格も400元程度と手ごろだ。地方都市の年配層を始め、アーリーアンチエイジング意識の高い二線都市の若者にも使用されていると思われる。
このPROYAを、トレンドExpressのSNSクチコミ簡易分析を通じて考察したい。
月次のクチコミ件数の推移を見ると、一番の山は10月、すなわち「ダブルイレブン」直前のマーケティング期間だった。その後、「3.8婦人節」のある3月に小さな突出期間があり、さらにそこから「618」に向かって伸びていくという商戦期需要を捉えた典型的な姿を示している。
「3.8婦人節」に関しては後述するが、それぞれの商戦後、クチコミ件数の平均値が若干上がっている状況から、商戦期のマーケティングを活用して、地道にクチコミを蓄積させていると推測できる。
またクチコミキーワードにおいては、同ブランドが起用している芸能人の名前はなく、主に同社の製品や含まれる成分に関するワードが非常に多くみられた。
これは同社がプロモーションの一環として、自社の研究員による成分やスキンケアの専門知識を発信し、「研究開発力のあるブランド」という権威性を伝えてきたことが要因として考えられる。
さて、同ブランドのプロモーションで特徴的なのが「3.8婦人節」におけるイメージ動画で、クチコミキーワードにも上がっていた。
同ブランドは一貫して「現代女性に寄り添う」という姿勢を示し、毎年の婦人節でそれを動画にして配信してきた。
21年には「そもそも男らしく、女らしく、のような性別で線を引くのはやめよう」と訴えていた。22年の婦人節においても、女性の獅子舞演舞者にスポットを当て、「女性だからできないなどという事はない」というメッセージを強く発信した。
現代中国は女性の社会進出が進み、大手企業からベンチャーまで、女性経営者の数も少なくない。
しかし、結婚や出産、育児(子供の教育含む)などの面においては、いまだに保守的な価値観が強く、それ故にストレスを抱え込む女性も大勢いる。
同ブランドではそうした女性の「心」に目を向け、そのストレスや悩みを受け止め、寄り添うメッセージを送り続けているのである。
実際にクチコミの月次件数においても、3月に増加がみられるのはそうした背景に起因すると推測される。
権威性をうまく活用することで商品の信頼性を高め、かつ現代女性の心に寄り添うメッセージを送り続けるPROYAの今後の動向に注目したい。