花王ヘアケア研究所は、洗髪翌日の毛髪の感触悪化の要因として毛髪に付着する微粒子に着目し、ほこりや花粉などの微粒子汚れの毛髪への付着しやすさを確認した。さらに、毛髪に微粒子が付着する一因を毛髪上の液油と考え、これを制御し、シャンプー、コンディショナーで微粒子汚れの毛髪への付着を抑制する技術を開発した。
今回の研究成果は、「2019年繊維学会秋季研究発表会(2019年11月9~10日、長野県)」にて発表している。
同社の調査では、地肌(頭皮)の清潔感が翌日も続いているかが「気になる」「やや気になる」と答えた人が半数以上にのぼり、そのうち4割以上の人が、翌日の清潔感を「髪のサラサラ感」として感じると回答している一方、朝の外出時と比べて日中に毛髪の感触が悪くなったと感じる原因については、「ほこり等の汚れ」の回答が最も多く6割以上となった。
そこで今回は、ほこりや花粉といった外部環境由来の微粒子汚れに着目し、その毛髪への付着実態を解析するとともに、日常的に使用されるシャンプー、コンディショナーで付着を抑制する技術開発に取り組んだ。
微粒子汚れとしてスギ花粉を対象に検討を行い、2019年3~4月(各日数時間)にかけて、屋外(栃木県)にウィッグ、毛束、衣類を設置し、付着したスギ花粉アレルゲン量をELISA測定法にて定量した。毛束から採取した毛髪をタンパク質染色剤ゲンチアナバイオレットで処理し、光学顕微鏡で観察したところ、球状粒子が青く染まったことから、毛髪への花粉の付着を確認した。
さらに、単位面積当たりのアレルゲン量を比較したところ、毛髪への付着量は衣類以上であることが示された。
同社のこれまでの研究により、毛髪が微粒子で汚れやすくなる一因は、毛髪上の液油であると考え、皮脂については根もとを含む頭髪全体を洗浄するシャンプーの処方、コンディショナー・トリートメントでは配合する感触向上剤のシリコーンに着目し、制御技術を検討した。
毛髪表面に存在する液体状態の皮脂を少なくするため、さまざまな吸油物質をスクリーニングし、シャンプーには独自開発基材カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(C-HPC)を配合した。そのモデルシャンプーで洗髪した結果、洗髪約20時間後において、未配合品に比べ微粒子汚れの付きやすさの指標である静摩擦係数の上昇を有意に抑制できることを確認した。また、コンディショナーについては、粘性の低いシリコーンを用いることが有効であると示唆された。
これらの技術を組み合わせたシャンプー、コンディショナーを頭部の左右半分ずつ6日間連用し、その被験者から採取した黒髪にテスト用の白い微粒子を噴霧し、色味の変化を研究員6名が評価した。その結果、毛髪への微粒子汚れの付着を有意に抑制できることがわかった。
毛髪への外部環境由来の微粒子付着実態を解析した結果、毛髪上には花粉をはじめとする微粒子が付着し、さらに単位面積当たりでは髪は衣類以上に汚れが付着しやすいことがわかった。
また、毛髪上の液油に着目して微粒子汚れ付着抑制技術を検討し、シャンプーには吸油性ポリマー(C-HPC)を配合、コンディショナーでは処方中のシリコーンの粘性を最適化した結果、日常的な洗髪行動でほこりや花粉など外部環境由来の微粒子汚れの付着を抑えられることがわかった。
同社ではこれらの知見を、ヘアケア技術・製剤の開発につなげていく。