資生堂、敏感肌では皮膚常在菌叢の多様性が低いことを発見

粧業日報 2020年9月2日号 4ページ

カンタンに言うと

  • 新規プレバイオティクス成分を配合した基剤が肌の水分量やキメを改善
資生堂、敏感肌では皮膚常在菌叢の多様性が低いことを発見
 資生堂は、顔の皮膚の常在細菌叢を網羅的に解析し、健常な日本人女性の肌において、表皮ブドウ球菌の割合が高いほど肌の水分量は高く、肌の赤みは低いという相関を見出した。

 また、敏感肌における菌叢の解析を行ったところ、敏感肌では、非敏感肌に比べて有意に菌叢の多様性が低く、表皮ブドウ球菌も少ないことを確認した。

 さらに、新たに開発したプレバイオティクス成分を含む基剤を連用した結果、全ての肌において水分量が改善し、特に、菌叢の多様性が低い肌においてキメの改善が確認できた。

 今後は、肌を皮膚細胞と共に常在する微生物を含めた生態系(エコシステム)としてとらえ直すことにより、新しいスキンケアソリューションの実現を目指し、今回の研究成果で得られた知見は今後スキンケア製品へ応用していく。

 資生堂では、約25年前から、アトピー性皮膚炎の増悪因子の1つである黄色ブドウ球菌と健常肌に常在する表皮ブドウ球菌とのバランスに着目した技術開発を行うなど、健康な肌状態の維持と皮膚常在菌との関係に着目してきた。

 近年、技術革新により可能になったマイクロバイオーム(菌叢)解析の手法を用い、同社では、安定して解析結果が得られる方法を確立し、健常肌における皮膚常在菌を解析するとともに、皮膚の細胞と皮膚常在菌が相互作用しながら共存する皮膚のエコシステムを明らかにすることで、新たなスキンケアのソリューションの開発を進めている。

 研究では、20歳代~30歳代の健常肌の被験者41名の頬から皮膚常在菌を採取後DNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いた16S配列解析法により、皮膚常在菌叢の解析を行った。各試料中の菌の相対存在比率と各種皮膚生理指標との相関性を解析した結果、表皮ブドウ球菌の存在比率が高いほど、肌水分量も高いことがわかった。

 次に、皮膚常在菌叢と肌の赤みについて20歳代~40歳代前半の健常肌の被験者36名の額について皮膚常在菌叢の解析を行った結果、各試料中で表皮ブドウ球菌の存在比率が高いほど、赤みが低いことがわかった。

 健常肌の中から、乳酸による刺激に対する感受性を指標に選ばれた敏感肌、非敏感肌の被験者各22名について、上記と同様な方法で頬の皮膚常在菌叢の解析を行った。菌叢の多様性評価に用いられるシャノン多様度指数では、敏感肌は非敏感肌と比較して有意に菌叢の多様性が低く、さらに一般的に検出される皮膚常在菌であるアクネ菌に対して、表皮ブドウ球菌の割合も低いことがわかった。

 続いて、試験管内培養系において、表皮ブドウ球菌の増殖を促進し、かつ黄色ブドウ球菌の増殖には影響しないようなプレバイオティクス成分を探索し、サッカロミセス抽出エキスを含む有効な組成物を見出した。

 効果の確認されたプレバイオティクス成分を基剤に配合し、27名の被験者に連用テストを行い、肌生理指標の測定を行うとともに、額や頬から皮膚常在菌を採取し、同様な方法で菌叢の解析を行った。その結果、全ての肌において水分量が改善し、連用開始時に菌叢の多様性が低かった肌で特に、キメが改善されることがわかった。また、表皮ブドウ球菌を含む病原性のないブドウ球菌属の菌数は連用により増加することがわかった。

 以上の結果より、皮膚の細胞と皮膚常在菌が相互作用しながら共存する皮膚のエコシステムをより深く理解し、解明していくことは、肌をより良い状態に保つための新たなスキンケアのソリューションの実現につながると考えられ、今回の研究成果で得られた皮膚常在菌に関する知見は今後のスキンケア製品へ応用していく。
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