最近、『化粧品メーカーの情報発信力』について、改めて考えることが多くなった。
理由は、化粧品ビジネスは本来、女性を「キレイにする」「美しくみせる」という夢を売るビジネスであったはずだが、近年、その情報発信力が薄れたのではないかと感じることが多くなったからだ。
背景のひとつには、様々な異業種からの新規参入が相次いだことによる「化粧品の同質化」が挙げられる。
そもそも化粧品販売会社の多くは、OEMメーカーに製造を委託しているため、どうしても似た処方の商品が多く出回る傾向がある。
同時に、販売促進や広告に関しても広告代理店などに頼ることが多くなりがちである。ましてや化粧品ビジネスに新規参入したばかりの化粧品会社は、道程もそのようなパートナーに頼ることが多くなりがちなのではないだろうか。
そうすると消費者にとっては、商品も広告も似たようなものばかりが溢れているように見えて、「同質化」を招いているように思われる。これでは、消費者に商品選びを迷わせるだけでなく、「化粧品なんてどれも一緒」と、化粧品そのものの価値を著しく低下させることにつながっているのではと思う。
では、化粧品メーカーの差別化はどうあるべきなのかを考えてみると、私は化粧品ビジネスにおいて大切なことは大きく2つあると考えている。
一つは「お客様に商品を長く使い続けてもらうこと」。二つ目は、「化粧品メーカーとしてお客様からの信用を得ること」だ。化粧品はそもそも、商品を販売しただけでは完成しない「半完成品」であり、お客様に商品を使い続けてもらい、「キレイになっていただく」ことで本来の目的を完了する。
だから商品を使い続けてもらうためには、お客様からの信頼を勝ち得ることが大前提だ。
そのためには各企業が他社とは異なる「個性=ブランディング力」を持つことが必要である。自分たちがどんな理念を持ち、どんなこだわりのもとで商品作りをし、その結果お客様はどんな肌になれるのかを丁寧に伝え、さらには正しい使用方法やお客様の肌悩みに寄り添ったお手入れ方法などを、絶えず情報発信し提案しつづけていくことで、お客様との絆をゆるぎないものへと強めていくことができるのである。
もちろん、これらの情報を発信し続けていくためにはお客様を飽きさせないための「工夫=コンテンツ開発」も不可欠である。
情報ネタの作り方は、素材や処方、商品コンセプトなどによる「化粧品まわりのネタ」、季節やライフスタイルに合わせた「化粧品の使い方のネタ」、実験や検証データなどによる「エビデンスのネタ」、使用後の感想やお客様座談会、お悩み相談などの「お客様の声のネタ」などなど。
そして、それらを伝える「表現手法」には文章、写真、図・イラスト、データ、Web、紙、動画などがあり、「演出方法」にはレポート、論文、セミナー、座談会、Q&A、アンケート、モニターなどがある。
これらの要素を組み合わせて、絶えず飽きさせない情報を提供していくことで、お客様はいつも新鮮な気持ちで情報を受け取り、キレイになる意欲を持ち続け、化粧品を使い続けてくれるのだ。
化粧品メーカーの使命は、単に化粧品を「物」として販売するだけではなく、女性の美しさを導き出すサポートのための情報発信力にあるのだと思う。
鯉渕登志子
(株)フォー・レディー代表取締役
1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。
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