【週刊粧業2018年6月11日号16面にて掲載】
最近中国の若手経営者組織の冊子に寄稿を依頼され、日本でビジネスをしている中国人や、中国通の人々と親しくなった。その中の1人が20年来中国を研究している日本人女性ジャーナリストで、多くの中国関連書籍を執筆している。彼女が「中国関連は変化のスピードが速く、本を執筆しても次々に内容が古くなってしまう」と嘆いていた。
我々も中国からの旅行者を身近に見ていると、最近は変化してきていると感じるが、中国国内の上海に代表される「沿岸都市部」の変化のスピードは、もっと速いということらしい。特に1980年代生まれ世代が、1つのブームを作っているようだ。
化粧品の分野でも、一時期のインバウンドの「爆買い」から「越境EC」への移行など、販売ルートの移行が見られる。ただし相変わらず日本製品の品質への信頼は高く、日本の丁寧なモノづくりや手間隙かけたサービスなどが高い評価を得ているようだ。
これだけ高い評価を得ていることはとても喜ばしいことだが、それに慢心してしまうことは、日本の化粧品業界の将来にとって必ずしもよいことばかりではないのではないかとも思う。というのも、私は若い頃ファッション業界で仕事をしてきたので、日本のファッション業界の栄枯盛衰を実感してきており、もともと心配性なので「同じことが起きなければよいが……」と思うからだ。
1970~80年代のファッション業界は、相変わらずパリが世界一に君臨する発信地で、クリエイターもバイヤーも世界中の人々がパリを目指していた。異論もあると思うが、東京はもちろん、ミラノ、香港、ニューヨークも、皆がパリをお手本にして、いわば「物真似ファッション」をしていたのだ。
そして40年を経過した今、ファッションの発信地は必ずしもパリだけではなくなり、「物真似」をしてきたところも自ら情報発信できる体制を整えている。特に購買力のある消費者を抱えている地域や国は、時間経過とともにクリエイティブ力も磨かれてきて、モノづくりの力も体制も整ってきている。現状では、ユニークなコンセプトを発信できる新興地域の方が勝っている場合もある。
同じことを化粧品業界に当てはめると、日本製の化粧品が越境ECなどで品切れを起こすほど売れていることは歓迎すべきことだが、そのうちに中国やアジアの国々でも自分の国らしい品質の高い化粧品を作り出せる技術や環境が整ってくるのではないかと思う。
その時に今と同じような圧倒的支持で、日本の製品を購入してくれるだろうか?なにしろ相手は変化のスピードがとても速い。日本が10年かかったことをわずか1年程度で成し遂げてしまうようなパワーを持っている。
そう考えると、現在の海外人気に頼りすぎるのはよくないのではないかと思う。やはりしっかりと国内でも評価される、自社ブランドの「確かな軸のような価値」を大切にしていくことが必要なのではないか。
つまり日本のオリジナリティーや技術を生かし、日本の消費者にも圧倒的に支持される「ぶれない軸」のある商品を作り続けないと、継続的な評価を得ることは難しいのではないか?と思う。これは老婆心だろうか?