【週刊粧業2022年09月05日号11面にて掲載】
多くの化粧品会社のお手伝いをしていると不思議に思うことがある。その一つが「美容メソッド」についての考え方だ。ずっと「化粧水はコットンでつけてください」と使用方法に記載していた化粧品会社が、商品が多くなるといつの間にかコットン使いを推奨せず、「手に取って、ハンドプレスしながらつけてください」という表記を使うようになった。
商品が変われば、テクスチャーも変わる。使い方も変わって当然。世の中のトレンドという変化もある。しかしかつては「手でこすると肌に刺激を与える」ので、コットン使いを推奨していたはず。
私はコピーを書く立場なので、ついつい「いいのかな?」と考えてしまう。
同じようなことは、多くの化粧品会社で頻発している。例えば「うちはオールインワンです。」と主張していた化粧品会社が、その後何の説明もせず、美容液や化粧水を推奨してくる。「オールインワンで、手軽なのが良い」と思っていたお客様にとっては、何か裏切られたような気持ちになってしまうのではないだろうか。具体的にクレームもあると聞く。
このように化粧品は他の生活雑貨と異なって「使用して初めて効果を感じる商品」なので、モノとして販売するだけでは完成しない。正しくあるいは上手く使用していただくことで完成する商品だ。
そのため、「化粧品の使い方」はとても大きな意味を持つ。テクスチャーの肌触りから香りやつけ心地、つけた瞬間の心地良さだけではなく翌朝の肌状態まで、使用して初めて良さが分かる。だからこそメーカーが推奨する使い方は、商品そのものと同じようにとても大切な情報だ。
そのため自社の美容についての考え方を「美容メソッド」としてまとめているのだ。使用手順にも開発者のこだわりが出る。例えば3ステップでも化粧水→美容液→クリームと塗布するのか、美容液→化粧水→クリームとつけるのかは大きく異なる。美容液が通常タイプではなくて、「導入美容液」的な役割を果たすものだった場合は、当然最初につけるべきだと納得できる。
またシンプルケアを謳っている会社が、2ステップ使いを推奨するのも理解できる。ただしその後、様々なスペシャルケアアイテムを推奨する場合は、お客様が納得できる合理的説明が必要だ。
他にもクレンジングやクリームを使う時は「マッサージをしながらくるくると円を描くように、お手入れする」という会社もあれば、「なるべく手で触らない。刺激を与えない」とする会社もある。
一方「泡を自分で作る石鹸は、空気に触れるのでNG」という開発者は、空気中の雑菌を嫌うため、泡で出てくる洗顔フォームしか作らない。このように「美容メソッド」は商品開発にも深く関わってくる。
「美容メソッド」はそのブランドの根本美容の考え方を表したもので、考え方の「芯」ともいえる。ところがそもそも「美容メソッド」=やり方、方法を設定していない会社も意外に多いようだ。
もちろん「ごく一般的な使い方でOK」と決めても良い。ただし美容に対するこだわりが少しでもあるなら、自社のオリジナル「美容メソッド」を設定した方が消費者目線からも好感が持てる。
「美容メソッド」は、新発売する商品の事情に合わせて、コロコロと変化するようなものではなく、どんな女性になってもらうのか、どんな美しさを目指すのか、どんなお手入れをしてもらいたいのか、開発者の美容に対する根本的な考え方なので、簡単には変えられないために信用される。
今こそ、オリジナルの「美容メソッド」を打ち立てよう。それが納得できる内容なら、お客様にも長く支持されるはずだ。